はじめに

第二章は「トレーニングの原則とランニング技術」ですね。どのような意図が?

まず私から質問するが、ランナーはどのようにトレーニングを組み立てたらいいかね?

速い人の練習を真似たらそのまま速くなるお

確かにそのような事は当たり前にやられている。だが本当にそれで速くなるだろうか?

前章で出てきた、「ランナーはそれぞれ固有の能力を持っている」ことの影響があると?

そう、トレーニングによる刺激は選手によって異なるのだ。速いランナーを真似たからってそれで同じように速くなれる保証などない。全員同じように速くなるんだったら、同じ練習をしている駅伝のチームは全員がエースになってしまうだろう?

じゃあどうしたらいいんだお

まずトレーニングにおいて普遍的に通用する原理を整理した。この原理の上に、3章以降で論理を組み立てていき、普遍的に通用する練習理論として体系化していくのが本書の流れだ。

数学で言えば、まず公理を定義しておいて、その公理を組み合わせて上位の定理を証明していく感じでしょうか。ランニング技術については?

これらはトレーニングの原理とは直接関係ないが、ピッチやフットストライク、呼吸の考え方などが特に重要なのでこの章で解説しておくことにする。
トレーニングの原理
2.特異制
3.過剰な刺激
4.トレーニングに対する反応
5.個人の限界
6.収穫逓減
7.加速度的な減退
8.能力維持の原理
刺激に対する反応

やる夫くん、走ったら体にどういう変化が出るかな?

ゼーハーするし、汗かくお。脚も疲れるお。

そう、ちょっと走ると心拍数が上がり、息は荒くなり、血圧も多少上がっているだろう。脚も疲れるだろう。それこそが走るという刺激に対して、体が反応したものだ。そしてトレーニングの効果はこの反応が現れる部分しか向上しない。
特異性の原理

刺激を受けて反応するのは刺激を受けた部位と関連する場所だけである。これも当たり前のことだと感じると思う。

下半身鍛えても上半身の筋力が向上することはない、ということですね。
過剰な刺激

やりすぎはよくないってことかお?

その通り、刺激は大きいほどそれに対する適応も大きくなるが、過剰な刺激は故障を招く。常に自分のレベルに合った刺激を与えるべきだ。
トレーニングに対する反応

これは1.刺激に対する反応と同じことを言っているように見えますが。

1よりも上位の概念だ。新たな刺激に対する体の反応は、初期こそよく反応するが段々とある地点へ収束していく。収束してから新たな能力を獲得するには、そこから量、強度、頻度などを変えて行く必要がるということだ。
個人の限界

個人の限界とか、夢も希望もないお

「4.トレーニングに対する反応の原則」に従えば無限に能力が向上していくように見えるが、実際は新たな刺激を増やしても体力は向上しないことがある。個人毎の限界というよりは環境の限界と言ってもいいかも知れない。時間は有限で、練習量は無限に増やせるわけではないからね。

そのような場合、避けるべきはオーバートレーニングだ。このような考えから私は、トレーニングペースを上げようとする選手に対して「その力があることを、レースで証明してみせなさい」と言うようにしている。

ぐはwww、かっこいいお
収穫逓減

収穫?なんか食べ物の話かお?

新たな刺激を与えると初期はよく反応するが、だんだんと反応が弱くなっていく、ということだ。

サブ5からサブ4よりもサブ4からサブ3の方がはるかに難しい、ということですね
加速度的な減退

これは6.の収穫逓減効果の逆ということでしょうか。

その通り。トレーニングを止めて初期の頃は、能力はわずかにしか落ちないが、止めた期間が長いほど、加速度的に能力が落ちてしまう。

元選手でも現役を退いてしばらく走らなかったら、ガチの市民ランナーよりも遅いことはままありますからね
能力維持の原理

新たな能力を獲得するよりは、維持するほうが簡単ということでしょうか。

キロ4分10秒でしか走れない人がキロ4分で走れるようになる労力よりも、すでにキロ4分で走れる人がキロ4分を維持する労力のほうがずっと少ないのは明らかだろう。
トレーニングプログラムの作成

以上のトレーニングの原理を踏まえ、どのようにトレーニングプログラムを組み立てていけばいいかの考え方を示す。ここではまだ具体的なトレーニング方法については言及しないので、あくまで組み立ての考え方のみだ。

ところでやる夫くんはどんな練習計画ならやる気になるかな?

その練習をやる意味を納得できていればやる気になるお!

そう、練習計画で最重要なのは、「この練習の目的は何か」に常に答えられるプログラムであるべきであろう。答えられないのならその練習はやるべきではないかもしれない。

また名言をいただいたお!

他にはどんなことを考慮に入れれば?

1週ごとに新たな刺激を入れていくのは過剰な刺激の原理からして好ましくない。オーバートレーニングを避けるために新たな刺激を入れるのは4週間~6週間後が望ましいだろう。
ランニング技術
ピッチ

私は様々な選手のピッチやストライドを測定してきたが、選手によって様々だ。ただしエリートランナーに共通することは、スピードを変えてもピッチは大きく変わらずストライドだけ変わる選手がほとんどだ。選手にとって最適なピッチがあるのだろう。

目安となるピッチはあるのかお?

私は180spmを目指すように推奨している。一流ランナーはみなほぼそれくらいだからだ。

キプチョゲ選手も180spmくらいのようですね
フットストライク

接地のことかお。最近はフォアフットが流行っているし、やる夫もフォアフットでガシガシ走りたいお!

フットストライクは選手によって最適なものがあるので無理に変える必要はないというのが私の考えだ

気をつけたいのは爪先が外側を向いていないかだ。この状態だとシンスプリントになりやすい。
ランニング中の呼吸

長距離走といえばゼーハー苦しいイメージだお。酸素をうまく吸えるような呼吸法があるのかお?

呼吸が苦しくなるのは酸素が足りないことよりも、肺の中の二酸化炭素濃度が高くなるからだ。そのため息を吐くほうに意識をおいたほうがいいこともある。

呼吸のリズムはどうしたらいいんでしょう。

私は2-2のリズムをおすすめする。1-1だと呼吸筋を酷使してしまう。
まとめ

まだVDOTとか具体的な練習方法の話は出てこないのかお・・・

本章で紹介したトレーニングの原則は当たり前のことだと思われるだろうが、その当たり前のことをしっかり確認しておくことが大事なんだ。

次の3章は運動生理学の話が中心だ。VDOTの基本となる部分だからよく予習しておくように。
つづく・・・
コメント