【男子マラソン世界記録保持者】キプチョゲ選手のVDOT

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ダニエルズ理論
出典:https://www.runnersworld.com/
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前回の記事でコスゲイ選手の女子マラソン世界記録と他の距離の記録をVDOT基準で比較してみました。

同じくキプチョゲ選手の公認世界記録、2:01’39″と先日のINEOS 1:59で達成されたサブ2記録、1:59’40″をVDOTで見てみようと思います。

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公認世界記録 2:01’39″@ベルリンマラソン2018

このタイムで計算するとVDOT 84.7となります。なおキプチョゲ選手はランニングエコノミーがかなり高い事がBreaking 2時の生理学テストで確認されており、またヴェイパーフライ Next%での記録ですので実際のVO2maxはこれよりもう少し低いと思われます。VDOTについては以下の記事をご覧ください。

練習ペース

以下がVDOT 84.7に相当する練習ペースです。

VDOT 84.7の練習ペース
Eペース3’20”-3’33″/km
Mペース2’53″/km
Tペース2’47″/km
Iペース2’33″/km
Rペース2’18″/km

Eペース下限が3’33″/kmとかもうよくわかりませんね。

ちなみにsweatelite.comというサイトでエリート選手の練習日誌が有料で見れます。キプチョゲ選手が昨年のベルリンマラソンで世界記録を出したときの練習日誌も公開されていて話題になりましたが、いつの間にか有料サービスになってしまって今は会員にならないと見れません。ただサンプルは見れるので、そこからエリート選手が実際にどのような練習を行っているのかの一端を見ることはできます。

サンプルによるとキプチョゲ選手の普段のジョグはキロ4’00″~3’50″前後で行っているようです。キプチョゲ選手のトレーニングキャンプは標高2400mあたりにあるようなので、VDOT計算機の高地補正を入れるとこの練習ペースよりも+12″くらいが適当みたいですね。なので高地2400mでのEペースに換算すると3’35”-3’45″/kmなのでそれよりは若干遅めですね。

また、インターバルは2’50″/km前後で本数を多めで行っているようで、高地補正込みでダニエルズのTペースとIペースの間くらいでしょうか。クルーズインターバルに近い感じでLTトレーニングとしてやっていると思われます。

元々は5000mの世陸金メダリストですので、以前はIペースでの練習もやっていたと思いますが、マラソン転向後はIペース以上の練習はほぼやっていないのかもしれません。

このあたりのキプチョゲ先生の練習についてはまた別記事で書こうと思います。

等価タイム

次にVDOT 84.7の等価タイムを見ていきましょう。

VDOT 84.7の等価タイム
距離等価タイム現世界記録
マラソン2:01’39″(2’53″/km)2:01’39″(2’53″/km)
ハーフ57’58″(2’45″/km)58’01″(2’45″/km, VDOT 84.7)
10km26’22″(2’38″/km)26’17″(2’38″/km, VDOT 85.1)
5km12’39″(2’32″/km)12’37″(2’31″/km, VDOT 85.0)

ハーフは先日のカムウォロル選手の記録ですが、VDOT的には同じ84.7という数値となりました。キプチョゲ選手とカムウォロル選手はトレーニングパートナーですが、VDOT的には互角です。カムウォロル選手はハーフ世界記録を出したら本格的にマラソンへの転向を示唆しているので、マラソンの世界記録を次に更新するとしたらこのカムウォロル選手かもしれませんね。

そして、10000mと5000mの記録はキプチョゲ選手のVDOTを上回っています。この記録の持ち主はみなさんご存知の通り、皇帝・ケネニサ・ベケレ選手ですね。37歳ながら先月のベルリンマラソンでキプチョゲ選手の記録にあと2秒に迫る世界歴代2位の記録で復活を印象づけました。

この5000mと10000mの記録はもう15年くらい更新されていないのでかなり難しい記録だとは思っていましたが、VDOT的に見てもかなり傑出した記録ですね。

ただエチオピアのバレガ、ケジェルチャ、ゲブリウェトら若い選手に勢いがあるし、Nikeの新スパイクを武器にしてここ数年で更新される可能性はあると思います。

なお、10000mのVDOT 85.1から換算するとフルマラソンの記録は2:00’58″という記録になります。ベケレ選手の全盛期にヴェイパーフライがあれば、人類最初のサブ2はベケレ選手だったかもしれませんね。

  • 5000m WRのレース動画
  • 10000m WRのレース動画

おまけ・非公認1:59″40@INEOS 1:59チャレンジ

最後に先日のINEOS 1:59で生まれた1:59’40″をVDOT換算すると、86.3となります。この記録は別記事でも書いたように、ペーサーのエアシールドとしての影響がかなり大きいと思われるので通常の公認記録と比較するのはナンセンスですが、あくまで参考です。

まず練習ペースは以下です。

VDOT 86.3の練習ペース
Eペース3’17”-3’30″/km
Mペース2’50″/km
Tペース2’44″/km
Iペース2’31″/km
Rペース2’16″/km

練習ペースの方はキロ当たり2″~3″速くなっていますが、もうよくわかりませんね。1″がとてつもなく重いレベルなのは間違いないでしょうが、我々一般人には想像もできない世界です。

VDOT 86.3の等価タイム
距離等価タイム現世界記録
マラソン1:59’40″(2’50″/km)2:01’39″(2’53″/km)
ハーフ57’03″(2’42″/km)58’01″(2’45″/km, VDOT 84.7)
10km25’57″(2’36″/km)26’17″(2’38″/km, VDOT 85.1)
5km12’27″(2’29″/km)12’37″(2’31″/km, VDOT 85.0)

5000mはついに12分半を切りました。2’30″/kmを切るペースなのでもはや人間に到達できるものなのでしょうか。ただベケレは平均2’31″4/kmで走っていることを考えるとペースメーカーの頑張り次第ではいけるのかもしれません。

10000mは26分切りと、こちらも想像すらできません。

ハーフは57分ちょうど付近。こちらはINEOS 1:59みたいにエアロシールドをつければカムウォロルが何とか狙えるかどうか?

そういえば以前ハーフ55分切りで1億円プレゼントとかいう全くプレゼントする気のないイベントを募集していましたが、炎上して中止になったようですね。こうしてVDOTで比較するとサブ2よりはるかに難しいことがはっきりわかります。

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まとめ

  • キプチョゲの現世界記録は他の距離から見てもそこまで傑出しているわけではないので、ここ数年で塗り替えられる可能性は十分にあるよ
  • ベケレの記録は偉大だけど、エチオピア勢の若手に勢いがあるのしテクノロジの進歩もあるので数年のうちに更新される可能性はあるよ
  • INEOS 1:59の記録は普通のレースなら更新の可能性はほぼないと思うけど、今後もテクノロジやトレーニング理論、そして傑出した才能の持ち主が現れればペーサー交代なしでも破れるかもしれないね

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