キプチョゲ先生の練習考察

エリート選手練習考察
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世界記録を出すような選手がどのような練習をしているのか、気になる方も多いと思います。sweatelite.comというサイトにエリート選手の練習方法が公開されており、キプチョゲ先生がベルリンマラソン2018で世界記録を出すまでの練習メニューは3,000,000PVを集めるほどの大人気コンテンツです。ですがいつの間にか有料サービスになっていたので今は会員にならないと読めません。

以前は無料だったので当時のレビュー記事などは海外サイトを中心にいくつか見つかったので、今回はその練習メニューを考察していきたいと思います。

以下の3つの海外記事を参考にしています。

How does Eliud Kipchoge train ?? - a post by Club Runners Tips and Advice
The greatest marathon runner the world has ever seen has been at the top end of track and road running since winning the world 5000m track champs at the age of ...
How Eliud Kipchoge Prepares for a Marathon: Part 1 » Believe in the Run
We look at how Eliud Kipchoge trains himself physically for the marathon distance, as we lead up to his record-breaking attempt in Vienna, Austria.
https://runningscience.co.za/elite-athletes-training-log/eliud-kipchoge/
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キプチョゲ先生のある一週間の練習

一週間だけ抜き出してきましたが、他の週もほぼ同じサイクルです。

AMPM
月​​21km moderate(70分, 3’20″/km)10km easy (40分, 4’00″/km)
トラックセッションレスト
18km easy-moderate (71分, 3’56″/km)11km easy (44分, 4’00″/km)
ロングランセッション レスト
18km easy-moderate (70分, 3’53″/km)10km easy (39分, 3’54″/km)
ファルトレクセッション レスト
20km easy-moderate (77分, 3’51″/km) レスト

週間練習距離:200km前後

まず、見てすぐわかるのはポイント練は週3回、朝練は毎日、午後練やるのは週2~3日でEasyランニングのみ、ということですね。練習量も週200km前後と日本の実業団と比べたらむしろ少ないほうかもしれません。これを見ると特別なことをしている感じはなくて、まさに王道を往くようなメニューですね。ダニエルズ信者の私としても全ての練習メニューの目的はなんとなく想像がつきます。

参考までにキプチョゲ先生のベルリンマラソンでのタイム2:01’39″から計算したVDOTの練習ペースは以下です。

VDOT 84.7の練習ペース
Eペース3’20”-3’33″/km
Mペース2’53″/km
Tペース2’47″/km
Iペース2’33″/km
Rペース2’18″/km

各セッションについて見ていきましょう。

easy-moderate ラン

ポイント練以外はほぼこのセッション。ペースに関してはeasyがキロ4ちょっと切るくらいですが、標高2400mの高地であることを考えると、心肺的な負荷は3’50″/km以内で走っていると考えていいでしょう。

また、走路も舗装されているところはなくアップダウンもあるようですから、実質の負荷はさらに上がります。フラットな低地の舗装路換算では3’40″/kmくらいがキプチョゲ選手のEasyランに相当するペースだと考えて良さそうです。moderateペースは低地換算で3’10″/km前後でしょうか。ダニエルズ先生のEペースよりやや速めという感じですね。

次に各ポイント練習について見ていきます。

トラックセッション

トラックは土トラックで行っているようです。10-15分のジョグでウォームアップして、ストレッチをしたら練習に入ります。主に2種類のインターバル練習をやっているようです。

  1. 計15km前後のマラソンペースでのインターバル
    – 1km x15 (2’50”-2’55”, 90秒 rest)
    – 1200m x12 (3’24”-3’30”, 90秒 rest)
    – (2km+1km) x5 (2’50”-2’55″/km)
  2. 計10km-15km前後のマラソンペースより速いインターバル
    – 800m x12(2’10”, 90秒 rest), 400m x10(62″, 90秒 rest)
    – 1200m(3’25”)-jog-1km x5(2’55”, 90秒 rest)-jog-300m x3(42″-40″, 60秒 rest)-jog-200m x2(27″, 60秒 rest)
    – 400m x20 in 64-65秒 (50秒 rest)

これも高地の土トラックということを考えると実質キロ-10秒くらいの負荷があると思われます。前者のマラソーンペース付近のインターバルは、高地のことを考えるとTペースに近いかやや速めなのでLT強化のためのクルーズインターバル的な効果を狙っていると考えられます。

一方、後者のインターバルはIペースに近いインターバルですね。VO2maxへの刺激を狙っていると考えられます。400mインターバルも低地の60秒(2’30″/km)に相当すると考えればダニエルズ式のIペースによるVO2maxインターバルとほぼ同じですね。本数はさすがに多いですが。

1200mから200mまでの組み合わせの練習は、後半の300m、200mはRペースに近い練習ですね。

ちなみにキプチョゲ先生はこれらの練習で膝に手をつくような仕草もなければオールアウトをするような感じではなく、もう何本か走れそうな余力がある感じだそうです。

ロングランセッション

主に30kmか40kmを走るようです。ペースは3’00″/kmから3’25″/kmくらいで、キプチョゲ先生のMペースからしたらキロ30秒近く落ちますが、高地であること、さらにアップダウンが多い不整地であることなどから、低地のフラット路面に換算したらキロ3分を切るようなペースで走っていることに相当すると思います。

つまりかなり実際のMペースに近い負荷ですね。これを毎週、しかも前日30km走っていてこのロングランができるのがすごすぎます。

ファルトレクセッション

インターバルと近いですが、ペースは決めずに時間で疾走と緩走を繰り返します。やり方は以下のように何パターンかあるようです。

1. 10分疾走、 2分レスト x4か5
2. 8分疾走、 2分レスト x6
3. 6分疾走、 2分レスト x8
4. 4分疾走、2分レスト x10
5. 3分疾走、1分レスト x 13
6. 2分疾走、1分レスト x17~20
7. 1分疾走、1分レスト x25~30

4分、3分、1分の疾走の場合が多いようです。実際の走行ペースを正確に言うのは難しいようですが、10分の場合は2’55″/km、1分の場合は2’45″/kmくらいのようですね。高地補正を入れるとTからIの間くらいでしょうか。トラック練習と比較するとLT強化の方に比重を置いているように見えます。

期分けについて

キプチョゲ先生は以下の3フェーズに分けてレースへの準備をしていくようです。

Phase 1

準備期。軽めのランやジムでのワークアウト等で故障耐性をしっかり高めます。ダニエルズ先生のⅠ期と同じ考えだと思います。

Phase 2

本格的な練習に入るフェーズ。週にロング走1回、ファルトレク2回、ウェイト1回、コアトレーニング2回などで負荷ををかけていきます。このフェーズで週200kmに到達するようです。

Phase 3

Phase2のファルトレクに変わってインターバルのセッションが入ってスピードもつけていきます。↑で紹介した週間練習例もこのPhase3のものだと思われます。ダニエルズ先生の期分けとは逆に最後にスピードを入れる感じで興味深いですね。

コンディショニングなど

週に3回マッサージを受けているようです。

ハードワーク後はアイシング等もしっかりやっているようですね。

睡眠時間は1日10時間ほど。夜は8時間、昼寝で2時間。やはりアスリートはこれぐらい寝ないと回復しないんですね。休息も大事なトレーニング。大迫選手も10時間くらい寝るとどこかで見た気がします。

まとめ

  • キプチョゲ先生の練習スタイルはまさに王道を往く内容で、高地補正を考えるとダニエルズ先生の練習ペースとかなり符合するよ
  • 高地の環境を活かして実際のペース以上の心肺負荷をかけているので、脚へのダメージも少なくハードワークが可能になっていると思うよ
  • 基本休みはないけど、コンディショニングや睡眠、栄養などしっかりしているし、練習量もそこまで多くないのが大きな故障をしていない一因だと思うよ

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