マラソンレースは長時間体を動かし続けるのでエネルギー補給は必須と言えます。
筋肉量などによって変わりますが体に蓄えられる糖質系のエネルギーは1500kcal~2000kcalと言われており、一方、フルマラソンを走り切るためのエネルギーは体重等によっても変動しますが2500kcal前後と言われています。
マラソンペースのような速いペースは解糖系の代謝が中心になりますので、補給戦略をミスるとハンガーノック状態に陥り、解糖系の代謝が働くようなペースで走ることができずEペース下限ぐらいで走るのが精一杯になってしまうと思います。
私も一度、ペース戦略と補給戦略の両方をミスってしまい、30km手前でハンガーノック状態に陥ってしまう辛いレースを経験しました。視界が白くなってきて体に力も入らず、1kmが非常に長く感じました。止まりたかったですが止まったら走り出せない気がしたのでなんとかゴールまで走り通しましたが、2度と経験したくないですね。
この補給戦略について、同じ走力のランナーが科学に基づいて最適な補給戦略をした場合と、個人の感覚に任せて自由に摂取した場合で平均10分程度のタイム差がついたという研究がありますので紹介します。
実験方法
まず、104名の被験者について、マラソン7週間前に10kmレースを走ってもらい、2つのグループ(FRE:自由にジェルを摂取、SCI:専門家の指定通りにジェルを摂取)に分けてそれぞれの平均走力が同じくらいになるように調整します。
その後、マラソン経験や年齢、10kmTTタイム、体格など近い人同士をペアにして、ペアが成立しなかった人は実験対象外とし、最終的に28人14ペアが実験対象となりました。
SCIグループで指定した補給方法
スタート10~15分前に200mlの水分と、ジェルを2つ摂取します。
スタート40分後に最初のジェルを摂取し、以降20分ごとに1個ずつ摂取していきます。水分は1時間に750mlを目安に摂取していきます。
なおジェルについてはH5というイギリスの会社のこちらの製品を使用したようです。
1個当たり20gのマルトデキストリン、20mgのナトリウム、30mgのカフェインが含まれているようで、1時間単位だとマルトデキストリン60g、ナトリウム60mg、カフェイン90mg、水分は750mlを摂取していったことになります。
実験結果
コペンハーゲンマラソン2013で行われました。気温は15℃~19℃とマラソンを走るにはやや高めだった感じですが曇りで途中雨も降ったようなので、そこまでパフォーマンスに影響はなかったでしょうかね。風も平均3m/sと強くはない感じで、コースもフラットなようです。
結果はFREグループの平均タイムは3:49’26″、SCIグループは3:38’31″と10’55″も平均タイムの差があったようです。
横軸が事前に行われた10kmTTのタイムで、縦軸がマラソンタイムです。凡例は○がFREグループ、●がSCIグループですね。ほぼ、SCIグループの人の方が下にある、すなわちマラソンタイムが良かったことを示しています。
実際の補給状況とペース変動
さて、FREグループとSCIグループの実際の補給状況はどうだったのでしょうか。以下のテーブルがそのサマリです。
大きな差があるのが、Carbohydrate(炭水化物、ほぼマルトデキストリン)ですね。倍ほどの差があり、FREグループは平均で40分に1個程度しか摂取していなかったようです。水分に関してはほとんど差がなかったようです。
また、実際の平均レースペースの比較が以下です。
FREグループの方は25km以降の後半に大きく失速して、SCIグループとの差が開いているのがわかると思います。10kmのTTがほぼ同じペアでの比較ですから、補給戦略の違いだけで後半にこれだけ差がでるという結果です。糖質不足が効いてきた結果と言えるでしょう。
これを見る限り前半からも地味に差がついている感じですが、カフェインの量なども関係するのかもしれません。
まとめ
- マラソンにおける補給戦略はとても重要だよ
- 同じ走力でも、補給戦略の違いだけで11分近くの差がついてしまったよ
- オーバーペースだと解糖系の代謝が促進されて後半糖質不足になる可能性が高くなるよ
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