持久運動のトレーニングについて学ぼうとすると必ず見かけるであろうVO2max(最大酸素摂取量)という指標。
単位時間あたりにどれだけの酸素をエネルギーに変えられるかという指標で、この値が高ければ高いほど有酸素運動能の上限が高いことを示します。ダニエルズ先生のVDOTも、このVO2maxが語源となっており、「見かけ上のVO2max」を意味する値でした。詳しくは以下の記事もご覧ください。
5000mと特に高い相関がある指標ですが、マラソンにおいても重要でこの指標が頭打ちになってスピードが伸びないという方も多いでしょう。
VO2maxの向上に効果的なトレーニングとしてはインターバル走が知られていますが、他のトレーニング、例えばLSDやLT走などと比較してどの程度VO2maxの向上に寄与するのでしょうか。またインターバル走によって体にどのような変化が起こっているのでしょうか。
今回はその効果について検証した文献を紹介します。
タイトル: Aerobic High-Intensity Intervals Improve V˙ O2max More Than Moderate Training
“好気性の高強度インターバルは適度なトレーニングよりもVO2maxを向上させる”
この研究の目的
異なる強度のトレーニングを一定期間続けた場合、どのような変化が起こるかを検証します。具体的にはLSD(75% HRmax x45分)、LT走(85% HRmax x24.25分)、ショートインターバル走(15秒疾走+15秒レスト x47 、90~95% HRmax)、ロングインターバル(4分疾走 x4、3分レスト、90~95% HRmax)の4通りの練習を比較します。
これらの4つのトレーニングでは心拍出量が等しくなるように量と強度が調整されています。心臓の仕事量としては同程度ということですね。
なおこのLSDですが、マラソンペースよりちょっと遅いくらいだと思うので日本で言われているLSDよりかなり速いと思われます。LT走は85% HRmaxなので、こちらはむしろMペースに近くダニエルズ先生のTペースよりちょっと遅いかも(ダニエルズ先生の定義では88%~92% HRmax)。インターバルペースもダニエルズ先生のIペース(98%~100% HRmax)より遅いです。まぁ95%以上はかなりキツいので、これぐらいが妥当なのかもしれません。
以下の図は、各トレーニングについて横軸を時間、縦軸を心拍数でプロットしたものです。
検証方法
55人の健康な男子大学生が被験者。被験者はランダムに上記4つのトレーニングのうち1つを選択し、週に3回トレーニングを8週間継続して行い、トレーニング期間の前後でVO2max、心拍1回あたりの体積、血液量、時速7kmでのランニングエコノミー、そしてLTを測定し、各グループ間で比較を行いました。
結果
大きな差があったのはVO2maxとStroke Volume(心拍1回当たりの拍出量)でした。以下、各項目について見ていきます。
VO2max
ショートインターバルが5.5%の向上、ロングインターバルが7.3%の向上と、他のトレーニングと比較して有意な差が認められました。LTトレーニングでも数%の向上は認められますが、やはりインターバル走の方が効果は大きいです。
Stroke Volume
心拍1回当たりの拍出量もショートインターバルとロングインターバルで10%前後と有意な増加が認められました。最大心拍数はトレーニングによって変わらないので、1回あたりの拍出量の増加で総血流量が増加し、VO2maxの向上につながっていると思われます。
血液量と血液学的反応
血液量、ヘモグロビン量はどのグループでも変化が認められなかったようです。VO2maxの向上は血液自体の酸素運搬能力が向上したわけではなさそうです。
ランニングエコノミー
7km/hでのランニングエコノミーは全グループで向上が認められましたが、グループ間での差は認められなかったようです。
LT
LTに関してもVO2maxに対する割合は各グループで差はなかったようです。しかしインターバルのグループはVO2maxが向上していますので、vLTはVO2maxの向上分だけ約9.6%改善しています。興
まとめ
- VO2maxを向上させるトレーニングとしては散々言われている通りインターバル走が最適だよ
- ショートインターバルでもロングインターバルでも向上するけど、どちらも狙った負荷での継続時間が大事だよ
- インターバルによるVO2maxの向上は、心拍1回当りの拍出量の増加と関連があると考えられるよ
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