多くの名ランナーを育てたレナート・カノーヴァ氏のトレーニング理論について以前紹介しました。
この記事では具体的な練習例まで落とせていませんでした。
カノーヴァ氏のトレーニングの記事は主にエリートランナー向けに書かれており、一般の市民ランナーレベルで書かれているものはほとんど見つかりません。
一つ見つかったのが、すでにハーフ1時間20分で走れる人がマラソン2時間50分向けにトレーニングしたまとめ記事。
VDOT信者的にはスピードは十分だからあとはロング走やれば余裕でサブ50達成できそう、と感じてしまいますが、カノーヴァ式の具体例をイメージするには良いサンプルだったので、このメニューをサブ3向けに置き換えて構成し直してみました。
前提:カノーヴァ氏のペース計算
カノーヴァ式は目標レースペースに対しての%で表現されますが、この%の感覚が直感的ではないので注意が必要です。例えばサブ3ペースの4’15″/kmの90%と言われたら、単純に90%で割った4’43″/kmと計算しますが、カノーヴァ氏の計算方法では10%遅いペース、という意味で以下の計算式を用います。
N = RP *(2 – P / 100)
ここでNはターゲットペース、RPは目標レースペース、Pは割合です。
カノーヴァ式の練習ペース
主に以下の割合のペースを使います。75%-80%はイージー、リカバリランニングやロング走に使用します。そこから先はマラソンペース走やロングインターバル走に使用され、100%を超えるスピードはファルトレクやインターバルで用いられます。
ただし最速でも10kmのレースペースまでで、ダニエルズ式でのIペース(≒5kmペース)は出てきません。そこまでスピードを上げるトレーニングは不要という考え方です。
目標ペースに対する割合 | ペース |
---|---|
75% | 5’19″/km |
80% | 5’06″/km |
85% | 4’53″/km |
87% | 4’48″/km |
90% | 4’41″/km |
93% | 4’33″/km |
98% | 4’20″/km |
100%(マラソンペース) | 4’15″/km |
105%(ハーフマラソンペース) | 4’02″/km |
110%(10kmペース) | 3’50″/km |
練習スケジュール
4つのポイント練(ロングインターバル、マラソンペース走、ファルトレク/インターバル、ロング走)を週2回ずつ割り当てた2週サイクルを回していく例です。
距離は若干適当ですが、この例だと週間70km以上にはなりそうなので各自リカバリランの量を調整するなどしてください。
第一週
曜日 | メニュー |
---|---|
月 | 5’06”-5’19″/km x10km |
火 | Q1:ロングインターバル |
水 | 5’06”-5’19″/km x10km |
木 | 5’06”-5’19″/km x10km |
金 | 5’06”-5’19″/km x10km |
土 | Q2:マラソンペース走 |
日 | 5’06”-5’19″/km x10km |
第二週
曜日 | メニュー |
---|---|
月 | 5’06”-5’19″/km x10km |
火 | Q3:ファルトレク/インターバル |
水 | 5’06”-5’19″/km x10km |
木 | 5’06”-5’19″/km x10km |
金 | 5’06”-5’19″/km x10km |
土 | Q4:ロングラン |
日 | 5’06”-5’19″/km x10km |
ポイント練
マラソンペース走
カノーヴァ式の最大の特徴である練習で、徐々に目標ペース(マラソンペース)付近で走れる距離を伸ばしていきます。スピードも93%前後から100%まで徐々に上げていきます。この練習例では最長でも22kmまでですが、理想的には30km以上は伸ばしたいところだと思います。
- 15km(4’33″/km:93%)
- 16km(4’33″/km:93%)
- 18km(4’33″/km:93%)
- 20km(4’33″/km:93%)
- 22km(4’20″/km:98%)
- 8km x2(4’15″/km:100%)
ロングインターバル
マラソンペース走とほぼ同じペースで、練習目的も同じだと思いますがこちらはロングインターバルとして実施するバージョン。以下のように徐々に距離とペースの両方をマラソンペースに向けて上げていきます。総距離は12.8kmほどから20km弱まで。
- 3.2km x4(4’33″/km:93%)
- 3.6km x4(4’33″/km:93%)
- 4.0km x4(4’33″/km:93%)
- 4.4km x4(4’20″/km:98%)
- 4.8km x4(4’15″/km:100%)
ファルトレク/インターバル
カノーヴァ式でマラソンペース以上で走る唯一のセッション。最速でも10kmレースのペースまでしか出てきませんが1km x10など疾走量は多めになると思います。10kmレースペースで8kmはかなりきつそうです。
- (3分MP-2分80%)x3-(2分MP-2分80%)x4-(1分HMP-1分80%)x10
- (3分MP-2分80%)x4-(2分MP-2分80%)x4-(1分HMP-1分80%)x11
- (3分MP-2分80%)x5-(2分MP-2分80%)x5-(1分HMP-1分80%)x12
- MPx1.6km-HMPx1.6km-10KPx8km
- 1km(3’50″/km) x10(600mレスト)
- 1km(3’50″/km) x5(600mレスト)
ロングラン
主にMPの80%で実施。ダニエルズ式のEペースによるロングランと同等の効果を狙ったものですね。
- 28km(5’06″:80%)
- 32km(5’06″:80%)
- 34km(5’06″:80%)
- 40km(5’06″:80%)
ダニエルズ式との比較
カノーヴァ式ではレースペースからの割合でペースを管理しており、LTやVO2maxなどは基本的に意識しないのが大きく異なります。
無理やりダニエルズ式で解釈すると、ファルトレクやインターバルでVO2maxを刺激する練習は皆無ですしLTレベルまでスピードを上げる練習もほとんどないです。
そしてメインとなるマラソンペース走とロングインターバルでとにかくマラソンペースで走れる距離を伸ばしていくというスタイルです。ファルトレクでもマラソンペースで走る時間は長いです。
ロングランについては両者共通する部分はあると思います。
余談ですが私が初サブ3を達成したころはダニエルズ式を知らず、どちらかと言えばこのカノーヴァ式に近い練習をしていたと思います。
まとめ
- カノーヴァ式によるサブ3向けの練習プランを組み立ててみたよ
- マラソンペース付近の練習に重点が置かれており、ダニエルズ式とは大きく異なるよ
- VO2maxを刺激する練習はほぼなさそうなので、元々スピードがあってスタミナが過大な人には合いそうな気がするよ
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