ランナーにとって栄養を考えることは練習を考えるのと同じくらい重要だと思います。ただ、食事だけで必要な栄養を補うことは管理栄養士でもない限り難しいでしょうし、多くのランナーはサプリメントに頼っていることと思われます。
ところが世の中には多くのサプリが溢れており、どれも謳い文句としては効果があるように感じてしまいますが、実際にこれは効果があると断言できるサプリは多くないのではないでしょうか。
それらのサプリの成分について、アメリカの国立衛生研究所(NIH)が実際にエビデンスがあるかどうかをまとめた資料(ファクトシート)が素晴らしかったのでまとめてみようと思います。
Office of Dietary Supplements - Dietary Supplements for Exercise and Athletic Performance
Information on dietary supplements for exercise and athletic performance. Learn about their use, safety, and health effects here.
抗酸化剤(ビタミンC・E、コエンザイムQ10)
- 期待される効果
運動すると筋肉にフリーラジカルが生成され、筋肉細胞を損傷するようです。抗酸化物質はその筋肉の損傷を減らすことができるため、筋肉の炎症、痛み、疲労を軽減できると考える人がいます。 - 実際の働きとエビデンス
筋肉の成長を減らす可能性があり、持久運動における有酸素フィットネスとパフォーマンスにはほとんど影響しません。またパフォーマンスを改善するために抗酸化剤が有効とする科学的根拠はほとんどありません。
アルギニン
- 期待される効果
アミノ酸の一種であり、タンパク質を含む食品に多く存在します。サプリメントの売り手はアルギニンを一酸化窒素に変換し、血管を拡張して血流を増加させ、パフォーマンスが向上すると主張しています。 - 実際の働きとエビデンス
研究は限られていますが、筋肉増強運動や有酸素運動にはほとんど、または全く効果がないようです。
ビートルート
- 期待される効果
日本ではあまり馴染みがないと思われるビートという植物の根で硝酸塩を豊富に含んでおり、これも体内で一酸化窒素に変換されて血管を拡張すると謳われています。 - 実際の働きとエビデンス
アルギニンと違い、多くの研究では好気性活動と持久力を改善することがわかっており、それなりに効果はあるようです。ただし、レクリエーションレベルでの報告が主のようです。ちなみにキプチョゲ選手も愛飲しているようです。
ベータアラニン
- 期待される効果
アミノ酸の一種です。体内でベータアラニンを消費してカルノシンを作り、これが乳酸の蓄積を減らすと主張されています。 - 実際の働きとエビデンス
いくつかの研究では水泳やホッケー、サッカーなどのパフォーマンスを向上させるとの報告がありますが、サイクリングやランニングなどの持久力に効果的かどうかは明らかではないようです。スポーツ医学の専門家は摂取の価値を認めていないようです。
HMB(3-ヒドロキシイソ吉草酸)
- 期待される効果
アミノ酸の一種で、筋肉の回復に役立つと考えられている別の化合物に変換されると主張されています。 - 実際の働きとエビデンス
十分な根拠はないようです。
ベタイン
- 期待される効果
ほうれん草などに多く含まれています。ベタインがパフォーマンスにどのように影響するかは不明のようです。 - 実際の働きとエビデンス
ボディビルダーのトレーニング強度とパフォーマンスの改善を研究したものがあり、僅かな改善しか見られなかったようです。科学的な根拠はほとんどないと言えるでしょう。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)
- 期待される効果
アミノ酸で ロイシン、イソロイシン、バリンなどが知られています。運動中のエネルギー構築や、筋肉の再構築に役立つ可能性があります。 - 実際の働きとエビデンス
持久力アクティビティのパフォーマンスを改善するという証拠はほとんどないようです。ウェイトトレーニングでは筋肉のサイズと筋力を高めるのに役立つ可能性はあります。またタンパク質を十分に摂っていれば自動的にBCAAの摂取量も増加します。
カフェイン
- 期待される効果
コーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれる刺激剤です。エネルギーレベルを高め、数時間疲労を軽減する効果が期待されます。 - 実際の働きとエビデンス
多くの研究と一貫したエビデンスにより持久力を向上させ疲労感を軽減させる効果が認められるようです。運動の15分~60分前に体重1kgあたり2~6mgの摂取がよいようです。なお10,000mg以上を摂ると死に至る危険があります。
シトルリン
- 期待される効果
アミノ酸で、体内でアルギニンに変換されるようです。アルギニンは血管の拡張が期待されます。 - 実際の働きとエビデンス
アルギニンの科学的根拠がなかったように、こちらも科学的根拠はないようです。
クレアチン
- 期待される効果
筋肉にエネルギーを供給する化合物です。 - 実際の働きとエビデンス
短距離走やウェイトリフティングなど、最大限の努力で筋肉を収縮させる能力を高めることができます。ランニングなど持久運動にはほとんど効果はないようです。
朝鮮人参
- 期待される効果
伝統的な漢方です。スタミナと活力を改善すると信じられています。 - 実際の働きとエビデンス
科学的な根拠はないようです。
グルタミン
- 期待される効果
アミノ酸です。BCAAからも生成され、BCAAと同じような効果が期待されます。 - 実際の働きとエビデンス
科学的な根拠はないようです。
鉄
- 期待される効果
酸素を運ぶ赤血球の原料となるため、不足すると貧血になりパフォーマンスが低下します。 - 実際の働きとエビデンス
鉄欠乏性貧血の人にとって、改善すれば筋力と持久力両方のパフォーマンスがおそらく向上します。すでに十分な鉄を食事から摂っている場合はサプリとして摂っても効果はありません。
プロテイン
- 期待される効果
筋肉の構築、維持、修復に役立ちます。運動後の回復に必要な時間が短縮されます。タンパク質はアミノ酸から作られますが、体内では作ることの出来ない必須アミノ酸を食事やサプリから摂取する必要があります。市販のほとんどのプロテインには必須アミノ酸も含まれているようです。 - 実際の働きとエビデンス
アスリートは1日に体重1kgあたり1.1~2gほどのタンパク質が必要とされています。摂取タイミングは就寝前3時間や運動後2時間以内が推奨されています。
ケルセチン
- 期待される効果
果物や野菜に含まれる化合物で、筋肉のエネルギー生産や全身の血流を改善するとされています。 - 実際の働きとエビデンス
限られた研究ではわずかな効果があるとされています。
リボース
- 期待される効果
筋肉のエネルギー生成に役立つ天然の砂糖です。筋肉がより多くのエネルギーを生成するに役立つとされています。 - 実際の働きとエビデンス
科学的な根拠はないようです。
重炭酸ナトリウム(重曹)
- 期待される効果
血中の乳酸を中和することで乳酸の蓄積を減らすことができると期待されています。 - 実際の働きとエビデンス
持久系パフォーマンスの向上が期待できるようです。ただ一部の人々には特に利点がなく、パフォーマンスが低下することもあり得るようです。
タルトチェリー
- 期待される効果
筋肉の回復に役立つとされています。 - 実際の働きとエビデンス
限られた研究ではボディビルダーの回復に役立つことが示唆されています。
感想
やはりカフェインとプロテインは鉄板ですね。貧血気味なら鉄も必須でしょう。
個人的には長年愛用していて疲労回復効果も実感できるレベルだと思っているBCAAが根拠不十分扱いなのは意外でした。確かに効果がないとする文献も探せばいろいろ出てきますね。大塚製薬のHPに載っている、BCAAがLTを引き上げるというのは疑わしく思ってましたが、疲労回復効果のエビデンスも微妙なんですね。
重曹は試したことがないですが乳酸を中和するって本当なんでしょうかね。一度試してみようと思います。
またここには載ってませんがL-カルニチンについても気になっているので一度試そうと思います。
それ以外のサプリについても根拠不十分としているものがほとんどでした。信じるか信じないかはあなた次第かもしれません。
まとめ
- ランナーには栄養素の知識は重要で、食事でカバーできない分はサプリで補いたいよ
- アメリカの国立衛生研究所(NIH)のファクトシートによれば市販のサプリで運動に効果があるとされているもののほとんどは根拠が不十分みたいだよ
- カフェイン・プロテイン・鉄は鉄板っぽいので安心して摂るといいよ。ただしカフェインと鉄は摂りすぎ注意だよ。
コメント
サプリは肝臓蓄積等により悪影響のある人工成分も多く含まれているとの情報があるので、不可欠で量確保に費用がかかる鉄のみ一番安全そうでコスパが良いアサヒのヘム鉄を取り、他に重要であるアミノ酸と必須タンパクは卵、牛乳、豆腐、イオンのオーガニックレモン果汁、トマトジュースを大量摂取により確保しています。コエンザイムQ10を勧める強いランナーもいますのでどうなんだろうと思っていましたが、理路整然とした実情も記載したこの記事でサプリについて自分なりに今の方法が正解で不可欠なサプリを最小限摂取するという頭の整理ができました。ありがとうございました。たく
サプリはあくまで食事で摂れない不足分を補うというのが重要ですね。摂りすぎても無意味か悪影響のある場合が多いです。