【論文紹介】故障防止に適切なトレーニング量とは?

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トレーニング
出典:https://runningmagazine.ca/
この記事は約4分で読めます。

スポーツでは上のレベルに行くほど故障せずに継続してトレーニングを積むことが重要となります。

ところが無理にトレーニング負荷を上げようとしてオーバートレーニングになると故障しやすくなるというのは誰もが納得するところでしょう。

一方、日常的に負荷の高いトレーニングをしている選手は、そうでない選手よりも故障耐性が高いという研究結果もあります。またトレーニング不足の選手は故障のリスクを高める可能性があるという研究結果もあるようです。

つまり故障耐性を高めるためには、オーバートレーニングを避けつつ十分な負荷をかけるという難しいバランスが求められると言えます。

今回はこの「故障防止のパラドックス」モデルを提唱する文献について紹介します。

The training—injury prevention paradox: should athletes be training smarter and harder?
Background There is dogma that higher training load causes higher injury rates. However, there is also evidence that training has a protective effect against in...
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故障率と負荷の関係の実例

外部負荷との関係

外部負荷は外から観測できる負荷です。GPSなどによる速度や移動距離などが代表的ですね。

この外部負荷と様々なスポーツの故障率の関係が報告されています。

例えばラグビーでは7m/sと非常に高速で9m以上ダッシュを繰り返した選手はそうでない選手に比べて負傷確率が2.7倍になったようです。

野球では100イニング以上投げた投手はそれ以下の投手に比べて故障リスクが3.5倍。

ボウリングでも試合で50投以上した場合は負傷リスクが高くなったなったようです。

このように外部負荷がある閾値を超えると故障率が上がるということが示唆されています。

内部負荷との関係

RPE(Rate of Perceived Exertion:自覚的運動強度)により評価します。トレーニングの主観的な負荷を1-10の10段階で表すので、体感的なきつさを表現する指標です。

下図はラグビー選手のRPEの集計と故障率の推移を表したものですが、RPEが高いほど故障率も増加しているのがわかります。

一方、こちらのグラフもラグビーのチームのデータで、左がRPE、真ん中が故障率、右側がVO2maxの変化を表しています。

2001年は負荷が高すぎて故障率が高くパフォーマンスが上がらず、2002年は負荷が弱すぎてやや故障が多く、2003年は適切な負荷で故障率が最も低くパフォーマンスは最も高いことを示しています。

つまりトレーニング負荷は高すぎても故障率が高くてパフォーマンスが上がらず、負荷が低すぎても故障の可能性は最低にならず、適切な負荷で最も故障率も低くパフォーマンスも上がることを示唆しています。

トレーニング負荷モデル

トレーニングの負荷には「急性」のものと「慢性」のものがあります。急性のトレーニングは「疲労」に、慢性のトレーニングは「フィットネスレベル」にそれぞれ関連しています。

ランニングに例えると、急性はポイント練、慢性は普段のジョグに相当すると思っていいでしょう。

この急性と慢性の比率について、例えば急性のトレーニング負荷が低く(すなわち疲労が低い)、慢性のトレーニング負荷が高い(すなわちフィットネスレベルが高い)場合はアスリートは十分に準備されている状態と言えます。この場合は急性:慢性の比が1以下ですね。

逆に、急性トレーニング負荷が高く(すなわち疲労が急激に上昇)、慢性トレーニング負荷が低い(フィットネスレベルが低い)場合は疲れた状態となり故障リスクが高いと言えます。この場合は急性:慢性の比率が1を超えます。

著者らは3つの異なるスポーツ(クリケット、フットボール、ラグビー)でこれらの最適な比率を調査し、怪我のリスクを抑えるためにはこの比率を0.8~1.3の範囲内に抑えるのが適切だとしています。

以下のグラフは横軸を急性:慢性の比率、縦軸が故障確率です。

感想

主にラグビーやフットボール、クリケットなどチームスポーツの故障の話が中心でしたが、ランニングにも当てはまるモデルですね。

急性トレーニング:ポイント練、慢性トレーニング:ジョグと考えればその比率が大事で、どちらに偏りすぎても故障確率が上がるというのは納得感があります。

ランニングのパフォーマンスを上げるためにはポイント練の量や負荷が重要だけど、ポイント練を増やしすぎても故障するからジョグ量も相対的に増やす必要がある、という多くの方が感覚的に感じていることが別のスポーツにおいても言える、という興味深い研究だと思います。

ダニエルズ先生の期分けでも、まずはフェーズIでEペースのみのトレーニングから入り、週間距離も徐々に伸ばしていって負荷の高いフェーズⅡ以降のトレーニングに移行していく期分けを推奨していますね。

まとめ

  • オーバートレーニングは故障確率を上げるけど、負荷が低すぎてもパフォーマンスは上がらないし故障もそこそこあるよ
  • 適切なトレーニング計画が故障確率とパフォーマンスを最適化するよ
  • 急性トレーニング(ポイント練)と慢性トレーニング(ジョグ)の比率が0.8~1.3くらいが故障確率を最小化するみたいだよ
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ごっきー
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コメント

  1. Choei より:

    勉強になりました。ありがとうございました。

    • ごっきーごっきー より:

      Choeiさん、お返事遅くなって申し訳ありません。
      急に負荷を上げるのはどのスポーツでもやはり危険なようですね。ご参考になったら幸いです。