【論文紹介】アクティブクールダウンは必要か?

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トレーニング
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アクティブクールダウン、もしくはアクティブリカバリは特に運動しないパッシブなクールダウンよりも運動後の回復を促進するのに効果的だと広く信じられています。

アメリカの大学のトレーナーの89%がアクティブクールダウンを推奨しており、そのうちの53%はジョギングによるアクティブクールダウンを推奨しています。

このように広く受け入れられているアクティブクールダウンですが、個別の研究は多くても統合された研究は少なくメリット・デメリットについて十分に整理されていないと言えます。

アクティブクールダウンについては様々な視点から膨大な研究がされており、全体像を掴むのが難しいですが、今回はアクティブクールダウンとパッシブクールダウンを比較したレビュー文献について紹介します。

Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response - Sports Medicine
It is widely believed that an active cool-down is more effective for promoting post-exercise recovery than a passive cool-down involving no activity. However, r...
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レビュー方法

運動後1時間以内にアクティブクールダウンを行っており、その同日および翌日のパフォーマンス、生理学的効果、心理学的効果、長期的影響について調査している文献を抽出し、パッシブクールダウンと比較して有意な差があるかどうかを調べました。

パフォーマンスへの影響

アクティブクールダウンをした同日、および翌日のパフォーマンスについて調査した文献では、いずれも有意な差がありませんでした。そのため、パフォーマンスを向上させるためにアクティブクールダウンをするという意味はあまりなさそうです。

生理学的効果

代謝副産物の除去

パッシブクールダウンと比較してアクティブクールダウンは血中の乳酸をより早く除去しますが、筋肉中の乳酸も除去されるとは限らないようです。また、アクティブクールダウンによりpHが安静時レベルへ回復する速度が上がるようです。

遅発性筋肉痛の低減

非エリートアスリートについては遅発性筋肉痛に影響を与えないようですが、十分に訓練されたエリートについては有益な効果が見られることもあるようです。全体的に見ればアクティブクールダウンは遅発性筋肉痛を軽減する効果は一般的ではないことが示唆されます。

筋肉損傷の低減

筋肉痛を起こさない程度の筋肉損傷について、血液中のマーカーを調査した研究ではいくつか矛盾した結果が出ているようです。ある2つの研究は速いリカバリを観測したとし、他の3つの研究では有意差は認められなかった、としています。

本レビューの著者らは効果があるとしている文献が証拠としている血中のマーカーと実際の筋肉損傷との関係は疑わしいとしており、筋肉損傷の低減効果についても有意な効果は見られないとの見解のようです。

神経筋機能と収縮特性

高強度の運動は中枢および末梢神経疲労を誘発し競技パフォーマンスを損なう可能性がありますが、アクティブクールダウンでは神経筋機能やその収縮特性について有意な差はなかったようです。

剛性と可動域

筋肉の損傷は筋腱ユニットの硬直を増加させる可能性があり、アクティブクールダウンはこの硬直を緩和させる狙いもあるようですが、こちらも有意な差がなかったようです。

筋肉グリコーゲンの再合成

I型筋繊維(遅筋)の筋グリコーゲン再合成を妨害する可能性があるようです。そのため、低強度でのトレーニングには問題ありませんが、中強度から高強度のトレーニングを行う場合は競技パフォーマンスを低下させる可能性があるようです。

免疫システムの回復

高強度の運動後は免疫が低下し、病気にかかる可能性が高くなります。2つの研究がアクティブクールダウンが免疫システムの低下を抑える効果があるとしていますが、他の2つの研究では有意差が見られなかったようです。

心血管系および呼吸器機能の回復

心血管系と呼吸器系は運動筋に血液と酸素を供給するために重要な機関で、激しい運動後にすぐに正常レベルまで戻ることはありません。アクティブクールダウンはこの回復を早める効果が期待されますが、これについては有意な差があるとしている文献が多かったです。

発汗速度と体温調節

激しい運動後、筋肉や体内温度は運動後90分ほどは安静レベルを超えていることがあり、アクティブクールダウンはこれを下げる効果も期待されますが、これについても優位な差はなかったようです。

ホルモン濃度

ホルモン濃度も激しい運動により変化し生理学的ストレスに関連付けられ、安静レベルに戻すためにアクティブクールダウンが期待されますが優位な差はなかったようです。

心理学的効果

心理的な効果は生理学的効果と密接に関連しておりパフォーマンスにとっても重要ですが、アクティブクールダウンは心理的測定値に対して有意な影響を与えないようです。

長期的な影響

アクティブクールダウンは故障予防の効果も期待されますが、故障予防に関しては有意な差は見られなかったようです。

アクティブクールダウンの効果まとめ

各項目についてのまとめです。緑のカラムがポジティブな効果があるとした文献、青のカラムは有意な差はなかったとする文献、赤の文献は有意にネガティブな効果があったとする文献です。

有意な差があるとされたのは血中の乳酸濃度と心血管系および呼吸器系の回復速度、および免疫システムの低下改善のみで、他の項目についてはほとんど差がありませんでした。また遅筋における筋グリコーゲンの再合成に悪影響を与える可能性も示唆されました。

血中乳酸濃度については広くエビデンスがありますが、筋肉中の乳酸まで回収されるかどうかは有意な差がなく、実用的な影響があるかどうかの判断は難しいところです。

まとめ

  • アクティブクールダウンの効果について様々な効果が謳われているけどほとんどはパッシブクールダウンと比較しても有意な差はないよ
  • 血中乳酸濃度を下げる効果はあるけど、筋肉中の乳酸を除去する効果については有意差がないので実用的な影響は微妙なところだよ
  • 心血管系や呼吸器系の回復速度や免疫システムの低下を改善する効果がある一方、遅筋の筋グリコーゲン再合成には悪影響の可能性もあるので注意したいよ
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ごっきー
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