走る路面と故障との関係について、多くの方はアスファルトなど硬い路面よりも不整地やトラックなど柔らかい路面のほうが故障しにくいと考えているのではないでしょうか。
しかし、少々古い研究での数千人規模の調査では、ランニングにおける故障と普段練習している路面との有意な関連は見つけられず、故障と高い相関があったのは走行距離、故障歴、競技志向性などでした。
これは近年の高いクッション性能を持つ厚底シューズを履いても故障が減らない可能性を示唆していて、実際に厚底シューズで故障が減るというコンセンサスはまだ得られていないと思います。
一見、硬い路面の方が脚への衝撃が大きく故障しやすいと感じてしまいますが、なぜ硬い路面でも柔らかい路面でも故障は起きるのか?この疑問に関する近年の研究について紹介します。
参考にしたのは以下の記事。
脚のスティフネスと脳の関係
ランニングでは足を接地させて蹴り出すことで前と上方向の推進力を得ますが、この接地のときに筋肉や腱は弾性エネルギーを溜め込み、蹴り出しのときに放出することを繰り返します。
一方、人はどんな路面でも同じ重心の位置で走ろうとします。そのため、近年の研究では足・シューズ・地面の「系」全体をバネとして捉え、これらの総合的な弾性特性を一定にするように脚の筋肉の収縮度合いを変えているのではないかという説が有力なようです。
すなわち、脚の硬さ(スティフネス)は柔らかい路面のときはより硬く、硬い路面のときはより柔らかく接地前に調整されるということが起きます。これは脳が脚への衝撃を検知して自律的に行っているようで、走行時の路面の硬さを予測して筋肉の収縮具合を接地前に調整するというフィードバックが常に働くそうです。
そのため路面が硬くても柔らかくても脚へのトータルの衝撃で見るとほとんど変わらないという説が現在は有力のようです。
脚のスティフネスと故障の関係
硬い路面では脚は柔らかくなり柔らかい路面では脚は硬くなる、ということはわかりましたがそれが故障にどのような影響を与えるのか?
これに関してはどちらもあり得るという研究結果があります。
デラウェア大学の研究では、脚のスティフネスが高いときに足底筋膜炎や疲労骨折にの可能性が高いとしていますが、カルガリー大学の研究では逆に脚のスティフネスが高い方が全体的な故障率が低かったことを示唆しています。
これに関しては故障という括りでなく、故障部位に関連があるのではないかという説を元記事の著者は提唱しています。それを実証するには多くの調査が必要であり、まだ仮説の段階のようですが有力な説だと思います。
さらにこの著者は筋肉など軟部組織の損傷については脚のスティフネスが低い(路面が硬い)ときに起こりやすく、逆に脚のスティフネスが高い(路面が柔らかい)ときは骨など硬い組織が損傷しやすいのではないかと考えているようです。
結局どの路面を走ればいいのか?
路面の状態によって体の組織にかかる負荷が変わるという説が正しいならば、結局は負荷を特定箇所に集中させないようにいろんな路面で走る、というのが故障予防には最適だと思われます。
また自分の故障歴に応じてどこが故障しやすいかがわかっていれば、故障しやすい路面を避けるという方法もあるでしょう。
また、不整地だと脚への負荷のかかり方が一歩一歩異なるため、より故障しにくいという考えもできます。
まとめ
- 路面が硬いと故障率が上がると直感的に思うかもしれないけど、統計上は有意な差はないようだよ
- シューズのクッションや路面の硬さで脚のスティフネスも調整され、負荷がかかる部分が変わってくる説が有力だよ
- 一つの路面にこだわりすぎず、いろんな路面で練習するのが故障率を下げる有効な方法だと考えられるよ
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