マスクをしたランニングでトレーニング効果が上がるのか?

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運動生理学
出典:https://openers.jp/
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新型コロナウィルス・COVID-19により日本全国にも緊急事態宣言が発令され、日常生活が制限されている昨今。ランニングについては現状、政府からも許容されているため、周囲に気を使いながら練習を継続されている方は多いでしょう。

その一環としてマスクをして走る方は多いと思いますが、マスクをして走ると何もしていない状態と比べて呼吸が辛く息苦しくなるため、心肺機能の向上に効果があるのではないか?と考える方もいるかもしれません。

そのような考え方はかなり古くからあり、普通のマスクではなくトレーニング用に開発された呼吸をより制限するマスクというものもあります。

これらのマスクには高地トレーニングと同じような効果があると謳うものもあり、例えばこの商品では以下のようなエビデンスがあるとしています。

✅スポーツ医学教授とのデータ測定(2018年)により、呼吸筋以外にも酸素の利用効率を高めるためのデバイスになる事が示唆された上に、利用実験対象者(全員普段からスポーツする者)10名中9名が短期利用による持久力や呼吸筋などの向上が見込めるのではと実感しています。トレーニングマスクは真剣に『持久力を向上させたい』というあなたの期待に応えるために作られたUSA最新トレーニングデバイスです。

「持久力や呼吸筋などの向上が見込めるのではと実感」というどうも歯切れが悪い表現ですが、持久力向上の効果があると主張しています。

高地トレーニングに関しては多くの結果が出ていますが、酸素濃度が下がる高地と違い呼吸制限トレーニングでは酸素濃度は変わらないため、効果があるのか疑問に感じる人も多いでしょうが、実際の効果はどうなのでしょうか?

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効果を謳う文献の例

一般的に効果が認知されていない製品について、効果があるとするエビデンスとして論文が引用されるのはよくあるケースですが、その論文は開発企業と大学の共同研究という場合は多いです。

またそのような研究は質が悪かったり、欠点がある場合が多い印象です。

例えば2002年のこちらの文献。

NCBI - WWW Error Blocked Diagnostic

7人の大学生の長距離ランナーに対して4週間の「呼吸制限トレーニング」を行って効果を確認しましたが、呼吸筋力と持久力の直接的なテストで大幅な向上を示したとしています。

この研究では、「呼吸制限トレーニング」をせずに他は同等のトレーニングを行った対照群がないので、本当に呼吸制限トレーニングの効果かどうかを確認できないという致命的な欠点があります。

対照群と適切に比較した研究例では?

こちらの研究例では9人のサイクリストについて2つのグループに分け、1つは3週間の呼吸筋トレーニングを受け、もう1つは通常のトレーニングを続けた場合で持久力の比較をしています。

Thieme E-Journals - International Journal of Sports Medicine / Abstract
Thieme E-Books & E-Journals

その結果はグループ間で有意な差なし。他の研究でも差がないとする研究例は多いようです。

一方、効果があるとする文献もあります。例えば2004年の研究では、20人の訓練されたサイクリストについて呼吸筋トレーニングをした実験群と偽の呼吸筋トレーニングをした対照群について、実験群で有意にVO2maxの向上が認められたようです。

NCBI - WWW Error Blocked Diagnostic

このようにいくつか矛盾した結果があります。

メタ解析では?

スポーツサイエンスなどの分野では同じテーマでも異なる結果が得られたとする研究も多く、それらの研究を集めて統計的に差があるかを解析するメタ解析というやり方があります。

2012年のメタ解析研究では、呼吸筋トレーニングの効果について運動経験のない人ほど効果があり、アスリートほど効果が少ない傾向があるとしています。ただこのメタ解析でも、参加者の質が幅広いですし、種目ボートや水泳、長距離走、シャトルランテスト、サイクリングと多岐に渡るのでその点は考慮する必要があります。

NCBI - WWW Error Blocked Diagnostic

呼吸筋と持久力パフォーマンスの関係についての考察

ここからは私の考えですが、そもそもマスクで呼吸制限をして呼吸筋が強くなったとして持久力が向上するのか?についてですが、呼吸筋が強くなって一度に大量の空気を肺に取り込めるようになったとしても、肺が酸素を血液に取り込んで心臓で血液を送り出し、活動筋で酸素をATPに変換するという一連の能力には一切関係がないように見えます。

特にVO2maxについては、以前書いたように一般ランナーは心臓の出力がネックになる場合がほとんどなので、肺活量が向上したとしても持久力パフォーマンスにはほとんど影響がないように思えます。

もちろん肺活量がネックになっている人はいるかもしれないのでそのような人には効果があるかもしれませんが、それ以外の人にとっては「苦しいだけで効果のないトレーニング」になってしまっている可能性が高いのではないかと考えます。

まとめ

  • マスクをしてランニングをすると呼吸が苦しくなるので効果がありそうだし、実際に効果を謳うトレーニング用品や研究結果もあるよ
  • 効果があるとする文献は既得権者が関係しているものも多く、効果がないとする文献も多いし、メタ解析でもトレーニングを積んだ人ほど効果がないという傾向があるみたいだよ
  • マスクで呼吸筋が強くなったとしても、VO2maxのボトルネックはほとんどの人の場合は心臓の出力なので、私は効果がない可能性が高いと考えるよ
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ごっきー
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