当たり前ですが男性と女性は体の作りが大きく異なります。
外見的な特徴としては身長差や体重差、体脂肪率などがまず違いとして現れますが、それらがランニングに及ぼす影響については前から気になっていました。
私自身もVO2maxは男性の方が高いらしい、くらいの知識しかなかったので調べてみたら以下の論文が見つかりました。
タイトルの通り、パフォーマンスが同じレベルの男女差を調べた論文ですので、今回はこちらの内容を紹介していきたいと思います。
被験者の身体的な特徴
この研究の被験者はマラソンのタイムが3時間20分前後の男性6人と女性6人の比較です。
やはり身長、体重、体脂肪率が大きく異なりますね。それにしても男性陣はこの身長体重で1桁の体脂肪率ですから、かなり筋肉質な体格と言えそうです。
生理学的データの比較
一方、生理学的データを見ていきます。
VO2maxやHRmaxの値が傾斜によって異なりますが、真のVO2maxやHRmaxはすぐに変動はしないと思いますので、トレッドミルの傾斜がキツイほうがより追い込めて真の値に近い値が測定できた、ということでしょうか。
これを見てもVO2maxは男性の方が有意に高いと言えますね。にもかかわらずパフォーマンスは同じということは、女性の方がLTが高い、もしくはマラソンペースを走れる%VO2maxが高いという推測ができます。
HRmaxに関しては、女性の方が平均年齢が若いことも踏まえるとほとんど差はないと言えるでしょうか。
血中乳酸濃度の比較
古い論文なので少し図が汚いですが、こちらはランニング速度と血中乳酸濃度の関係を表したグラフです。実線が女性、点線が男性です。
今回のマラソンペースは3時間20分ですので210m/minあたりですね。男女とも当然LT以下ではありますが、このペースでもやや女性の方が血中乳酸濃度が高めですね。
またマラソンペースから負荷を上げていくとLTも男性の方が高いと言えそうです。
ランニングエコノミーの比較
こちらの図は当ブログではおなじみ、ランニング速度と酸素消費量(VO2)の関係を表したグラフです。これも実線が女性、点線が男性ですね。同じ速度で走ったときの酸素消費量が少なければランニングエコノミーが高い、と言えますのでこの場合は男性の方がランニングエコノミーが有意に高い、と言えます。
つまり、同じVO2で走った場合は男性の方が速く走れるはずです。しかし、今回は同じパフォーマンスの男女間を比較していますから、パフォーマンスは同じはず。ということはマラソンペースでのVO2が女性の方が男性よりも高いことを示唆しています。女性の方が高い%VO2maxでもマラソンを走れてしまう、という結果ですね。
ここからは個人的な推察ですが、一般的には運動強度の%VO2maxが上がると解糖系代謝の割合が増えてマラソンを走り切るのは困難になるはずです。ですが女性が高い%VO2maxでも走りきれるのは酸化系代謝能力が優れていて、解糖系代謝を節約できるためだと解釈しています。
これはおそらく男性にしては体脂肪率が高めと思われ異常なスタミナを有する川内優輝選手にも当てはまると思っています。知り合いの超スタミナ型のランナーも体脂肪率が高めな印象。ちょっとこの当たりの仮説に関しては後でエビデンスを探そうと思います。
練習量の比較
当然同じパフォーマンスで走るとなると女性の方が練習量は必要になりますね。女性の3時間20分は男性のサブ3目前くらいに相当しますから、それなりの練習量は必要です。
ただ女性の週間60kmで3時間20分はなんとなく妥当な気がしますが、男性陣は週間33kmで3時間20分で走るってポテンシャルの塊ですね・・・私には絶対無理っぽい。
まとめ
- 同じパフォーマンスの男女を比較するとランニングエコノミーの差が大きいよ
- つまり女性の方が高い%VO2maxでマラソンを走れることを示唆しているよ
- 当然だけど練習量も女性の方が多く必要になるよ
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