インターバルトレーニングは疾走速度・距離(時間)・レスト距離(時間)・本数などパラメータが多く無限に組み合わせが考えられるので、効果を最大化するのは非常に難しいトレーニングです。
ダニエルズ先生のIペースによるVO2maxインターバルの例だと、98~100%VO2maxのIペースで4分疾走 x 3分レストというパターンでやられている方も多いと思いますし、ペースをIペースからやや落としてレストを200m90秒未満でやっているという方も多いでしょう。
ただそれが最適だと自信を持って取り組めている方はほとんどいないのではないでしょうか。
インターバルトレーニングの研究の歴史は長く、前述の通り無限とも言える組み合わせがあるので自力で整理するのは難しいですが、幸いにもメタ解析論文も多数あり、いずれも興味深いです。
今回は、HIIT(High Intensity Interval Training)とSIT(Sprint Interval Training)でトレーニングしたランナーのタイムトライアル結果についてメタ解析によって比較した文献について紹介します。
HIIT、SITの定義
HIIT、SITとも厳密な定義ではないので混乱しやすい用語です。
この文献ではLT2(OBLA)からVO2max負荷によるインターバルをHIIT、VO2max負荷以上でのインターバルをSITとして定義しています。
ダニエルズ先生の定義に従えばSITはRペース付近になると思います。
解析対象の文献抽出手順
SPORTDDiscusとMedlineから6994文献をキーワードから抽出し、そこから以下の基準に合う文献を抽出しています。
- 少なくとも週に3時間はトレーニングしている
- 被験者が18歳~45歳
- ランダム化やペアマッチでHIIT・SITグループを決めている
- 実施したインターバルトレーニングについて詳細な情報がある
- 少なくとも2週間以上継続している
- TTを実施している
最終的にこれらの条件に合う6文献を抽出しています。
これらの文献ではHIITの高負荷1回あたりの平均は2.9±1.2分、SITでは30秒でした。
高負荷時の強度はHIITが88%±11%MAP/MAV(Maximal Aerobic Power/Velocity:VO2max時のパワー/速度なのでvVO2maxとほぼ同義だと思われる)、SITが153%±28%MAP/MAVとのこと。
なおこのメタ解析ではランニング以外の持久系スポーツも含まれており、TTはサイクリングが3文献(40km、20km)、ランニングが2文献(2km、3km)、ボート漕ぎが1文献(2km)となっております。
比較結果
HIITとSITの比較ではTT結果について有意な差はなかったようですが、HIITをLong(4分以上)、Medium(2分以上4分未満)、Short(2分未満)に分けた場合では、Long-HIITがSITに対してTT結果について2%の改善が見られたようです。
なおVO2maxについては有意な差はつかなかったようです。
また、HIITの組の方が有意にMAP/MAVが向上したようです。VO2maxが向上せずともMAP/MAVが向上したということはエコノミーが向上したと言えそうです。
タイムトライアル結果の分布は以下です。横軸がSITとの平均差、縦軸が標準偏差です。緑が最も良かったLong HIITの組。青の破線はHIIT全体の平均であり、Long-HIITの組が最もTT結果が良いのがわかります。
感想
高負荷4分以上のLong-HIITが最もTTが良いという結果でした。これはダニエルズ先生推奨のIペースによるインターバルの設定とも近いので、またダニエルズ先生の正しさが証明されてしまったとも言えます。
一方、VO2maxではSITもHIITも変わらなかったということで、これは意外でした。ある程度トレーニングを積んだ被験者はやはりそう簡単にVO2max自体は変わらないということでしょうか。もしくはSIT(VO2max以上の負荷で30秒程度の運動)でもVO2maxを改善する可能性がありそうです。このあたりは他の文献も継続調査しようと思います。
TT自体はHIIT、特にLongが良いという結果なので、おそらくTTの動作と近いLong HIITでエコノミーが向上したと考えられそうです。
まとめ
- インターバルトレーニングはパラメータが多すぎて最適化が難しい練習だよ
- HIITとSITで大雑把に比較すると、Long-HIITが最もTTが良かったよ
- VO2maxは変わらなかったので、SITでもVO2maxの改善効果があるかすでに個人の上限近くになっていた可能性があるけど、TTはLong-HIITが最も良いのでエコノミーに差がついた可能性があるよ
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