以前の記事でアメリカ国立衛生研究所(NIH)のアスリート向けサプリメントについての見解を紹介しました。
この記事で紹介したファクトシートは2017年が最終更新となっており、その後の研究結果等は反映されていません。
栄養に関する情報は比較的更新頻度が早いので、ある程度最新の情報をウォッチしておくことも重要かと思います。
というわけで2017年以降の新情報についていくつかの信頼性が高そうな情報を見つけたのでアップデートしていこうと思います。
持久系アスリートのプロテイン推奨摂取量について
米国スポーツ医学会 (ACSM) が2016年に出した声明では持久系アスリートのタンパク質摂取目安量は1.2~2.0g/kgとしていました。体重60kgとすると72g~120gですね。以前紹介したNIHのファクトシートでもこの値で書かれていました。
ところが、このACSM声明の元になった評価ではタンパク質必要量を過小評価していた可能性があったようで、その後の研究では20km走る日の必要タンパク質量は1.83g/kgと見積もられたようです。先行研究と比較して30~50%程度高い値なのでこの数値を目安にプロテインを摂取すべきかもしれません。
この詳細な解説は以下のスポーツ栄養Webの記事が素晴らしいです。
IAAF(国際陸連、現在はWA)が陸上競技者に推奨する栄養素
当時のIAAFが2019年に発表した陸上競技の栄養に関するコンセンサスでは、陸上競技のパフォーマンスを高める可能性のある栄養素として以下の5つを挙げています。その5つは、カフェイン、クレアチン、硝酸塩、ベータアラニン、重炭酸塩。このうち長距離種目に関してはカフェインと硝酸塩の2つが推奨されています。
以下の表は各種目ごとに推奨する栄養素をまとめたものです。
カフェインは全ての競技に有効とされています。短距離や跳躍、投擲など瞬発系にはやはりクレアチンがいいようですね。乳酸処理が重要な400m~3000mSCはベータアラニンと重炭酸塩、そして中距離以上では血管を拡張するとされる硝酸塩の摂取が推奨されるようです。
硝酸塩は以前の記事でも紹介しましたが、ビートルートに豊富に含まれており海外でもかなり注目されているようです。あのキプチョゲ選手もビートジュースを愛飲しているとされています。
乳酸処理に効果があるとされるベータアラニンと重炭酸塩は長距離でもLT以上で走る5000m、10000mやLT付近で走るハーフまで有効な気がしますが外されているのはよくわかりません。
なお800mと七/十種競技は全部摂れということですね。
また、この文献では上記テーブル以外にもマラソンなどの長距離レース中の補給についても言及されており、炭水化物の推奨摂取量目安は以下の量が推奨されるようです。
~1時間 | 少量 |
1~2.5時間 | 30g~60g/h |
2.5時間以上 | 90g/h |
ピットインの170kcalで炭水化物42gですから、3時間くらいではやはり3本くらい摂りたいところですね。
まとめ
- 持久系アスリートのプロテイン摂取量は最近の研究では以前の目安よりも多めがいいとされているよ
- IAAFが2019年に発表した陸上競技者の栄養に関するコンセンサスでは、長距離種目ではカフェインと硝酸塩が摂取推奨としているよ
- マラソンの補給に関しては、3時間前後ならレース中に炭水化物120g前後(500kcal前後)は摂りたいよ
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