ランナーにとって重要な体重管理。
日本では「体重1kg減ればマラソンで3分速くなる」という謎の定説が広まっていますが、根拠もよくわかりませんし、そもそも1分の価値もタイムによって全く異なってきますのでいくらなんでも乱暴な説です。
それでもランニングは自分の体重を自分の力で運ぶ運動ですから、筋肉量をほぼ落とさず脂肪だけ落として減量できれば有利なのは間違いないでしょう。
減量については根拠も不明な様々な方法が溢れていますが、単純に総摂取カロリー より総消費カロリーを高い状態をキープすればまず痩せますから意志だけの問題だと思います。
ダイエット界にも様々な迷信がありますが、その一つが「朝食を抜くと太りやすい」という説。聞いたことがある方も多いと思います。摂取カロリーを減らすために朝食を抜く戦略をとったとしても太ることはありえるのでしょうか。
今回は朝食と減量についてのメタ解析文献について紹介します。
解析方法
朝食を摂った場合と摂らなかった場合について、体重とエネルギー摂取量を測定している文献を合計13件抽出しました。そのうち7件は朝食の有無による体重変化、10件はエネルギー摂取について評価しています。
ほとんどが米国か英国で実施されたものですが、1件は日本のものも含まれます。
5件については肥満者を対象にしたもので、他は様々な体重範囲です。
食事の管理方法は、研究室で実際に監視したものから、被験者に食事日誌を提出してもらったものまで含まれます。
試験の期間は2週間~16週間の範囲。
解析結果
体重変化
体重変化のフォレストプロットは以下。右にいくほど朝食抜きの方が体重が減ったことを示します。
全体としては有意な差はなく、平均では0.44kgほど朝食抜きのほうが減ったようです。
摂取エネルギー
1日当りの摂取エネルギーの比較は以下。
朝食を食べるように割り当てられた参加者は、朝食をスキップするように割り当てられた参加者よりも1日あたりの総エネルギー摂取量が多かったようです(平均差259.79 kcal )。
朝食を抜いた場合は間食の我慢ができなかったり、他の食事での摂取エネルギーが増えることが予想されますが、朝食の摂取エネルギー>朝食を抜いて他の食事や間食で摂るエネルギー、ということなので朝食を抜いたほうが1日当りの総摂取カロリーは抑えられるようです。
このように体重の変化、および総摂取カロリーどちらを見ても、朝食抜きが減量に悪影響ということを裏付ける証拠は見つかりませんでした。
感想
あくまで朝食を抜いても特に太りやすいという証拠はない、という文献なので減量のために積極的に朝食を抜いた方が良い、ということを推奨するものではないです。
特に糖質が不足すると脳の仕事効率も落ちるので、仕事に集中すべき社会人にとっては朝食をしっかり食べることは必須でしょう。実際、社会的・経済的な地位が高い人ほど朝食をしっかり食べる傾向があるようです。
また、朝食を摂取する群はアルコールの摂取量も少なく、食物繊維摂取量も多い傾向があるようで、すなわち社会的・経済的な地位が高い人ほど健康的なライフスタイルを好むようですね。
減量について私個人の経験では、サブ3を目指していた頃はとにかく軽いほうが有利だと思いこんで無茶な食生活をしていました。現在は当時より+3~4kgですが当時とは比較にならないくらい走力は上がりましたし、故障も当時より減ったと思います。
睡眠の質を上げるために寝る1時間くらい前に炭水化物を摂るのが推奨されたりしますし、しっかり食べないと体も回復しないので、減量にこだわりすぎずにトレーニングとリカバリのバランスをうまく調整していくのが王道ですね。
まとめ
- ランナーにとって減量は気になる話題だけど、「朝食を抜くと太りやすい」という説が世界的にも広まっているよ
- 小規模なメタ解析では、朝食の有無による体重変化、および総摂取カロリーどちらで見ても特にそれを支持する証拠はなさそうだよ
- 体重管理は重要だけど、食事を減らすとリカバリが追いつかずに故障しやすくなるし、こだわり過ぎも良くないよ
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