ランニングを始めた動機がダイエット目的という方はかなり多いと思います。初期投資もほとんどかからず手軽に始められるし、1人でいつでもできるので、やる気次第であっという間に適正体重まで落とすことは可能でしょう。
ダイエットに成功してゆっくり走ることに物足りなくなり、記録志向になる方も一定数いますが、記録志向になっても体重管理は重要になります。
きつい練習をすればリカバリのためにしっかり食べないと故障しやすくなりますし、体も省エネルギーで走ることに適応して低燃費になってしまい太りやすくなると思います。
かといって年中食事に気を使うのもストレスですし、レース前だけしっかり減量して普段はあまり体重を気にしないという人も多いでしょう。
今回はそんな悩める減量ランナーに向けて、脂肪を燃やしやすいトレーニングについてのレビュー文献を紹介します。
脂肪の酸化(燃焼)に影響する要因
トレーニング状況
そもそも運動習慣がある人と、全く運動しない人では運動習慣のある人のほうが脂肪の酸化能力が高いようです。
ある研究では運動習慣のない人について12ヶ月に渡ってトレーニングを行い、その間の脂肪の酸化能力を測定したところ、トレーニング開始前と後では大きな差がありました。これはトレーニングによってミトコンドリアの密度が増えてよりミトコンドリアで脂肪の酸化が行われるようになったと思われます。
運動強度
65%VO2max以下の強度で特に脂肪がよく燃えるようです。そこから強度を上げても解糖系代謝の割合が増えていき、持続可能時間も短くなるので脂肪燃焼効率は良くないようです。65%VO2maxはダニエルズ先生のEペース範囲のちょうど真ん中くらいですかね。
下の図は横軸が運動強度、左の軸(赤)が脂肪酸化による代謝の割合、右の軸(青)が解糖系代謝の割合です。
運動持続時間
運動開始直後から脂肪は燃焼しますが、特に90分以上持続する運動の場合に効率が良いようです。90分を超えるとIMTG(筋肉内トリアシルグリセリド)という筋肉内の脂肪が低下していき、皮下脂肪を積極的に使うようになるようです。
性差
女性の方が脂肪を燃焼させる能力が高いようです。300人を超える調査によれば、41%~61%VO2maxのすべての強度で女性の方が脂肪酸化能力が高い結果が得られました。
その要因は女性ホルモンのエストロゲンですね。マラソンにおいてもこの影響は顕著で、ハーフまでの持ちタイムに比べてフルのタイムがいい女性は多いです。
栄養
脂肪を積極的に摂ることで脂肪の酸化能力を上げるファットアダプテーションという手法があります。カーボローディングと組み合わせるというハイブリッド手法もあるようですが、別の文献ではマラソンにはファットアダプテーションはオススメできないという見解でした。
感想
以上、5つの要因でした。
ランナーはすでにミトコンドリアが十分に発達しているでしょうから、ゆっくり長めに走るという普段のジョグでやっていることが脂肪を燃やすのにもいいというわけですね。
ファットアダプテーションに関してはエビデンスも多く、耐久レースでの持久力を上げるというメリットはあるのでしょうが、脂肪を燃やしたいのに脂肪をたくさん摂るというのは減量の場合は本末転倒なので、減量目的でやる手法ではない感じですかね。
まとめ
- 脂肪の酸化効率を上げる5つの要因についてまとめた文献をレビューしたよ
- 65%VO2max以内で90分以上走るのが減量目的では効率良さそうだよ
- ファットアダプテーションは減量目的というよりは耐久レース向けだと思うよ
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