「きついトレーニングの方が練習効果があるはずだ。」
そう考えて毎回のポイント練で限界まで追い込んでしまうランナーは多いと思います。
確かにトレーニングには「大は小を兼ねる」的な部分はあるでしょう。すなわち同じ時間トレーニングをするならば、速く走った方が遅く走った場合の効果プラスアルファの効果を得られると思います。
ただ毎回追い込むのは精神・肉体の両方をかなり酷使しますし、その質を長期間継続するのは難しいと思われます。そのため、毎回全力で追い込むのではなく、適度な強度で継続してトレーニングした場合では高強度運動と比較してどのような差があるのでしょうか。
今回はその疑問について調査した文献について紹介します。
方法
20人の健康で持久運動歴のない女性が今回の被験者。平均年齢は23±5.7歳、VO2maxは30.1±4.4と初心者スペックです。
これらの被験者をランダムに2つのグループに分け、一方の高強度運動グループはサイクルエルゴメーターでWmaxの80-90% で1分の運動を6~10セット、もう一方のグループは60-80%で同じ量の適度な運動をそれぞれ週3回行い、合計12週間の経過を観察しました。
そのうち3週間毎にVO2maxを測定し、体組成の変化などもチェックしていきます。
結果
3週間ごとの高強度(HI)と適度(MOD)のグループのVO2max比較が以下です。
HIグループは最初の3週間で60%近い改善を示し、MODグループに対して30%近くの差をつけています。ところが、その後は徐々に差が縮まり、9週間後ではその差は10%にまで縮小。
さらにそこから12週間まではHIグループは改善せず、12週間後では両グループともほとんど同じVO2maxの改善を示したそうです。
また体重や体組成についても量グループ間で有意な差はなかったようです。
感想
人間それぞれ限界はどうしてもありますから、高強度のトレーニングを繰り返して限界値付近への到達速度が早くなっても、いずれは適度なトレーニングに追いつかれるということですね。
特にVO2maxは心臓の出力がネックになる場合が多いですから、 心臓の肥大化が個人の限界に達したらそこで走力もキャッピングされてしまうのかもしれません。
一方、高強度トレーニングは故障リスクも高いでしょうし、いずれは同じ地点に到達するなら故障リスクの低いモデレートなトレーニングを継続するという方が精神・肉体どちらにとっても総合的にはメリットがあると言えるかもしれません。
ただこれは初心者についての結果なので、トレーニングを積んだランナーではまた異なる結果になる可能性はあると思います。
特にエリートランナーにおいては高強度のトレーニングを継続できる肉体や精神が前提の世界なのかもしれません。想像しかできませんが。
まとめ
- 高強度運動は単発のトレーニング効果は高いけど継続性の面で難があるよ
- 運動経験の浅い被験者に対する実験では、高強度運動は最初の3週間は高い成長が見込めるけど、最後の3週間はほとんど成長せず適度なトレーニングとほぼ同じ到達点になったよ
- トレーニングを積んだランナーならまた別の結果になる可能性はあるけど、高強度運動は故障のリスクも高いから、故障リスクの低い適度な強度を続けるのが成長への近道かもしれないよ
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