今回はマラソンの前日本記録保持者であり、ハーフマラソンの現日本記録保持者の設楽悠太選手の練習方法について考察していきます。
設楽悠太選手は高校、大学時代こそ兄の啓太選手の活躍に隠れていましたが、大学2年時の箱根7区は区間新、4年時には3区で首位を逆転してそれぞれ優勝に貢献するなど、大学レベルでもトップクラスの選手でした。
社会人になってからはリオ五輪10000m代表になるなど、日本トップクラスの選手に成長しました。またヴェイパーフライの登場とともにさらに強さを増し、東京マラソン2018では2:06’11″でマラソン日本記録を16年ぶりに更新。
ところが先日のMGCでは暑さを考えたら無謀とも思えるハイペースで飛ばし、ハーフ過ぎから大きく失速してしまい惜しくも代表内定はなりませんでした。もう少し暑さを考慮したペース配分や暑さ対策をしっかりしていれば内定を取るチャンスは大きかったと思うので、個人的にはもったいないレースだったと思います。
今後は残った1枠に向けて日本記録の再更新を狙ってくると思いますが、その可能性は十分にあると思います。
そんな彼の練習方法は、メディアが伝えるところによれば多くの実業団選手が取り入れている40km走をやらない、体幹トレーニングも不要、など型破りとも言われています。
日本記録を更新したあと多くのメディアが取材して上記のような断片的な情報は多くあるのですが、週間でどのような流れで練習をしているのか、といった情報まではなかなか見つかりませんでした。唯一見つかったのがletsrun.comのこちらのスレッド。
元情報のソースがわからないのでこれが本当かどうかもわからないのですが、他に情報がなかったのでとりあえずこの情報を元に考察を行いたいと思います。間違っていたらごめんなさい。
設楽悠太選手の週間練習例
AM | PM | |
DAY1 | 25kmジョグ(4’00″/km) | レスト |
DAY2 | ポイント練1 アップ4 km(4’30″/km) 1km x10 ON/OFF (ON:3’00”-3’05” / OFF:4’30”-4’40”) ダウン10 km(4’45″/km) | レスト |
DAY3 | 20kmジョグ(3’50″/km) | 20kmジョグ(4’15″/km) |
DAY4 | ポイント練2 アップ4 km(4’30″/km) 400m x25(66″-68″, REST 400m@5’00″/km) ダウン10 km(4’45″/km) | レスト |
DAY5 | 20kmジョグ(4’05″/km) | 20kmジョグ(4’05″/km) |
DAY6 | 25kmジョグ(4’00″/km) | レスト |
DAY7 | ポイント練3 25kmロングラン(3’10″/km) | レスト |
週間走行距離:220km前後
ここからわかる情報としては、ポイント練習は週3、ジョグはキロ4前後ですね。走行距離は週間220km前後と、月間なら900km前後でしょうか。実業団選手の平均的な値かもしれません。
また、この練習がどのフェーズのものかも不明なのですが、400m x25を10000mのレースペース付近でやっていることを考えると10000mに向けた練習なのかなと想像できます。また25kmロングランもやっているので、ニューイヤー駅伝4区に向けた練習も意識しているように見えます。なので八王子LDからニューイヤー駅伝に向かう時期、10月終わりぐらいの練習ではないかと推測します。
参考までに設楽悠太選手のマラソン記録2:06’11″から計算したVDOTは81.1で、練習ペースは以下です。
ポイント練1:1km ON/OFF走
1km 3’00”-3’05″と 4’30”-4’40″を交互に繰り返して20km走る練習のようです。疾走部分はMペースに近く、緩走部分はEペースよりかなり遅めです。
この練習の意図は、Mペースでのロング走の負荷が大きいので緩走と交互にすることで脚への負荷を抑えつつMペースに慣れる、ということだと想像します。
ダニエルズ先生が推奨するMペースの練習方法のバリエーションの中に、MペースとEペースを組み合わせる練習パターンがありましたが、これもそのパターンの派生と考えると納得です。緩走部分はEペースよりかなり遅いですが、それでもそれなりにきつそうな練習です。
ポイント練2:インターバル400m x25
設定が66″-68″ということで、2’45″/km-2’50″/kmですね。このペースで10000mを走ると27’30”-28’20″となり、ちょうど設楽悠太選手のレースペースになります。すなわちこの練習は10000mに向けた練習だと想像できます。
生理学的な刺激について考えてみると、このレベルの選手の10000mになるとレースペースはTペース(2’52″/km)よりもかなり速めになりますが、Iペースよりは遅いので、VO2maxよりはLTの改善を意識したインターバルだと思います。
レストも400mキロ5と長いし遅いので、おそらく設楽悠太選手レベルならそれなりに余裕を持ってこなせるメニューだと想像します。
参考までにキプチョゲ先生の400mインターバルは
400m x20 in 64-65秒 (50秒 rest)
で、しかも標高2400mの高地かつ土トラックでやっています。しかも余裕を持って。やっぱりキプチョゲ先生は化け物ですね。
ポイント練3: 25kmロングラン
平均3’10″/kmの25km走とのことですが、3’20″/kmから入って後半は2’50″/km前後まで上げるBU走のようです。ハーフマラソンやニューイヤー駅伝4区(22km)を意識した練習だと思われます。
Tペースが2’52″/kmなので最後の方はこのスピードで走っていると考えると、これもLT改善の練習だと思います。設楽悠太選手は5000mよりも10000m~ハーフが特に強いですので、このような練習を重ねてLTの%VO2maxを高めているのだと思います。
マラソンに向けた練習は?
各メディアのインタビューで語られていますが、30km走も3’30″/kmくらいと遅め、40km走はやらない、レースに積極的に出て勝負勘を養う、などが取り上がられていますね。
高いLTを誇ると思われる設楽悠太選手なので、ロング走は脚作り程度の感覚なのでしょう。
僕は、今年のニューイヤー駅伝が終わって3、4日間休んでから、少しずつ準備を始めました。練習は、1km 3分30秒のペースで30kmを走ったり、5km×4本というメニューだったり、そんなにペースは速くなかったですし、学生でもできる練習メニューだったと思います。実は、40km走は1回もやりませんでした。
出典: https://sports.nissin.com/rikujo/club/crosstalk/shitara_murasawa.html
マラソンでは一般的とされる40キロ走の練習を設楽は好まない。練習で走り込んでこそ、と諭されても「それは昔の考え方」と取りあわない。練習を積んだからといって本番で結果が出るほど簡単な競技ではないと語る。「30キロ以降は気持ちの問題。走力は関係ない」とも。
~中略~
40キロ走の代わりに、週末に駅伝やハーフマラソンを重ねて勝負勘を養う。できることなら毎週出場したいと思う。マラソンへの調整でレースに出る選手は多いが、設楽はどのレースも力を注ぐ。
出典: https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29427330W8A410C1US0000/
まとめ
- 設楽悠太選手の練習はLT強化の練習が多く、10000m~ハーフの強さも納得だよ
- 「40km走はしない」、の発言が大きく取り上げられているけど、月間900km前後と距離もしっかり走り込んでいるみたいだよ
- MGCは残念だったけど最後の1枠を狙える数少ない選手の1人なので狙ってほしいよ
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