今年からプロランナーとなった川内優輝選手の練習について、VDOTに基づいた考察をおこなってみます。
川内選手といえば公務員時代に東京マラソン2011で日本人トップとなる3位に入り、市民ランナーながら世界選手権代表の選考基準をクリアしたことで一躍注目を浴びました。
非強化校出身ながら箱根駅伝は選抜チームで走っていますが、公務員としてフルタイムで働きながら並み居る実業団選手達を倒すその姿に衝撃を覚えた方も多いと思います。
その後もコンスタントに活躍を重ね、世界選手権のマラソン代表に選出されること4度。世界選手権ではロンドンでの9位が最高ですが、世界選手権そのものよりはその選考過程でドラマチックな走りを魅せる印象ですね。特に別府大分毎日マラソン2013での中本健太郎選手との一騎打ちは歴史に残る名勝負でしょう。
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そして何よりもWMMの1つであるボストンマラソン2018で優勝というとんでもない偉業を成し遂げました。ボストン優勝は瀬古選手以来ですが、WMMとなって東アフリカ系選手が本格的に参入するようになった今の時代とは価値がまったく違うと言っていいでしょう。
川内選手のVDOT
まず川内選手のPBを整理してみましょう。
1500m | 3:50.51 (2012) |
5000m | 13:58.62 (2012) |
10,000m | 29:02.33 (2010) |
10km road | 29:54 (2013) |
10miles road | 47:28 (2014) |
Half Marathon | 1:02:18 (2012) |
Marathon | 2:08:14 (2013) |
50km Ultramarathon | 2:44:07 (2016) |
どれも素晴らしい記録ですが、やはりマラソンの記録が突出していますね。また、PBのほとんどが2012-2013ですので、このシーズンが今のところの選手としてのピークと言えそうです。もちろん今後また更新していく可能性はありますが。
さて、これらの記録で一番VDOTが高いマラソンの記録から、等価タイム出してみましょう。
やはりマラソン2時間8分台前半で走るにはハーフ61分台、1000m27分台後半、5000m13分代前半が平均的な走力だと思いますが、どれもかなり差がある感じです。これを見ても川内選手はかなりのスタミナ型と言えるでしょう。
また、川内選手のレースの特徴として、前半の高速展開についていけずに遅れても、後半ほとんど落ちずどんどん順位を上げていくことが多いです。ここから見ても超スタミナ型と言えるでしょう。
また、寒さに強いことでも有名で、ボストンマラソン2018の優勝はまさにその得意条件を最大限活かした優勝と言えるでしょう。
川内選手は大食漢でランナーとしては重めの体重と体脂肪率が知られていますが、脂肪をエネルギーに変える能力が突出していることがこれらの特徴の一因であると個人的に考えています。
そんな川内選手はどのような練習をしているのでしょうか。市民ランナー時代の川内選手の練習については各メディアで散々取り上げられていますのでご存じの方も多いと思いますが、一度整理してみます。
市民ランナー時代の川内選手の練習
川内選手は公務員時代は12:45-21:15の勤務で、平日は午前中に練習を行っていました。そんな川内選手の週間練習は以下のような流れだったようです。
まず川内選手のスタイルとして知られているのが、毎週のようにレースに出ることですね。練習パートナーに恵まれていないのでレースを負荷の高いポイント練として取り組むスタイルです。
家庭持ちの市民ランナーには真似できませんが、設楽悠太選手もレースをポイント練代わりにするスタイルでマラソン日本記録を更新しましたね。
また、実業団選手が行っている二部練を否定して練習は1日1回のみで通していることも有名です。これも練習時間の確保が難しい市民ランナーとしてのスタイルですね。
普段のジョグペースもキロ5前後と、このレベルの選手としては極端に遅いと思われます。キロ4はジョグじゃないという考えのようですね。
ちなみに川内選手のVDOTから見た練習ペースは以下です。
やはりEペースはキロ4切ってきますので、キロ5のジョグはかなり遅い部類かと思います。この練習で3’02″/kmでマラソンを走ったのですから、ダニエルズ信者としてはにわかには信じられないですね。一度発達させた心血管系はこれぐらい落としても維持できるということなんでしょうか。
川内選手の特性を考えてもかなり特殊な生理学的特性を持つと思われるので、一度専門家の方にしっかり分析してほしいころです。
水曜に行っているインターバルについても考察をすると、1000m x10の練習はほぼTペース付近でやっている感じですね。LTへの刺激を狙ったものだと考えられます。400mのインターバルのペースは不明ですが、おそらくこれがVO2maxへの刺激を狙ったものでしょう。
やはりこれだけ見ても特筆すべきものはなく、マラソン2時間8分台で走る説得力が薄いのでやはりレースのポイント練としての効果がかなり大きいと思われます。
まとめ
- 川内優輝選手の実績はとても市民ランナーとは思えないレベルなので、海外でもかなり話題になっているよ
- 練習はジョグは遅めで量も少なめ、ポイント練も特筆すべきことはないので、やはりレースの練習効果がかなり大きいと思われるよ
- 超がつくスタミナ型なので、かなり特殊な生理学的特性を持つと思われるよ
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