陸上競技ファンなら知らない人はいないであろう、モー・ファラー選手について取り上げてみたいと思います。
ファラー選手といえばロンドン・リオ五輪で2大会連続の5000m・10000m長距離二種目金メダリストで、この時期のトラック競技を完全に支配していました。特にラストスパートが中距離選手並に強烈で、全盛期はラストスパート合戦に持ち込んだらまず勝っていた印象です。
そんなファラー選手の週間練習例が以下のサイトに載っていたので考察してみます。
ファラー選手の経歴
ファラー選手はソマリア出身。ソマリアは東アフリカに位置し、長距離大国で有名なケニア・エチオピアと隣接しており同地域の恵まれた遺伝子を持っていると思われます。
ソマリアは御存知の通り内戦で国内はひどい状況ですので8歳でイギリスに渡りました。そこから徐々に頭角を表していき、イギリス国内では無双する状態。2008年北京五輪では予選落ちでしたが、2010年ごろにはヨーロッパ選手権で2冠を達成。
そして2011年にNike オレゴンプロジェクトに参加するため渡米し、ここから更に凄みを増していきます。
同年に5000m 12’53”, 10000m 26’47″のPBを記録すると世陸2011大邸大会でも5000m金、10000m銀。2012年ロンドン五輪では冒頭の通り長距離2冠。
世陸2013モスクワ大会、2015北京大会も2冠と大舞台では負け無し状態。2016年のリオ五輪でも2冠。2017年の世陸ロンドン大会では5000mでエドゥリスに敗れ銀メダルも、10000mは勝っています。
つまり2011~2017の世界大会で5000m・10000mで負けたのは2回だけという驚異的な成績で、まさにトラック種目を支配していました。2種目エントリーすると両方の種目でベストに持っていくのは難しいでしょうし、すごすぎるとしか言いようがありませんね。
その後、マラソンに転向して2時間5分台のヨーロッパ記録も樹立しましたが、東アフリカ勢ほどのパフォーマンスは出せておらずキプチョゲ選手らには歯が立たない状況。
そんな事情もあり東京五輪は再びトラック種目での出場に切り替えたようです。バレガ、ケジェルチャらの若手とメダル争いをする姿が東京で見られるのは楽しみですね。
ファラー選手の典型的な週間練習
AM | PM | |
---|---|---|
月 | 16kmリカバリラン(3’45″/km) | 9.6kmリカバリラン |
火 | 6.4kmウォームアップ 12.8-19.2kmテンポラン(2’55”-3’07″/km) 4.8kmクールダウン | 9.6kmリカバリラン |
水 | 19.2kmリカバリラン | 8.0kmリカバリラン |
木 | 17.6kmリカバリラン | 8.0kmリカバリラン |
金 | 6.4kmウォームアップ インターバル200m x10(29″, R 200m, 芝生で実施) ヒルスプリント200m x10(歩いて戻る) 6.4kmクールダウン | 6.4kmイージーラン |
土 | 17.6kmリカバリラン | 7.6kmリカバリラン |
日 | 35km-40kmロングラン(3’32″/km) | レスト |
- 週間190km-210km
- ジムでの補強トレ2回
このプログラムは主にロンドン・リオ五輪で2冠を達成する時期のプログラムのようです。
週間の中でテンポラン、インターバル、スプリント、ロングランとバランス良く組み合わせているのがわかりますね。
参考までにファラー選手のVDOTを計算してみます。
種目 | タイム | VDOT |
---|---|---|
マラソン | 2:05’11” | 81.9 |
ハーフ | 59’26” | 82.4 |
10km | 26’47” | 83.3 |
5km | 12’53” | 83.0 |
1500m | 3’28” | 82.6 |
一番高いのは10000mの26’47″です。やはり印象通り10000mがとにかく強いです。なお1500mも3’28″と長距離選手としてはとんでもない記録なので、ラストがあれだけ強かったのも納得です。
このトレーニングペースは以下の通り。
これをもとに週間練習例について考察してみます。
リカバリラン
Eペースの下限が3’44″/kmというわけわからない速さで、実際にリカバリランは3’45″/km前後で行っていたようです。もはやリカバリになるのか想像もできませんが、このクラスではこれがリカバリランなのでしょう。
テンポラン
ファラー選手のTペースは2’49″/kmですが、テンポランはこれより遅くした2’55″/km程度で12.8km-19.2kmと長めに走っていたようです。2’55″/kmはほぼマラソンペースですが、ダニエルズ先生のテンポランのメニューにもMペースでの60分走があるのでそれに近い練習ですね。
インターバル走
この例では200m x10と量は少なめな印象です。もちろん他のバリエーションもあるのでしょうが。200m29″はIペースを超えてRペースに近いですね。リカバリが200mと長めなので、リカバリの速度にもよりますがこれでVO2max強化を狙ったものだと思われます。
ヒルスプリント
これは歩いて戻るということなのでレペティションとして無酸素運動能とランニングエコノミー向上を狙ったものだと思います。
ロングラン
3’30″/km程度のEペースの上の方でロングランをしています。やはりトラック種目メインでもロングランは重要ですね。
まとめ
- ファラー選手はマラソンでは苦戦気味だけど、2011~2017年はトラック種目を完全に支配していたよ
- その練習はテンポ走、インターバル、ヒルスプリント、ロングランとバランス良く組み合わせているし、リカバリも3’45″/kmとダニエルズ先生のEペース下限で行っているよ
- 東京五輪はトラック種目で参戦するようなので、勢いのある若手との対決が楽しみだよ
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