今回はマラソンの元世界記録保持者であるウィルソン・キプサング選手の練習の考察を行います。
キプサング選手はいまのところキプチョゲ選手にマラソンで勝ったことがある唯一の選手です(ベルリン2013)。そしてこのレースで2:03’23″の世界記録を出したのをはじめ、2時間3分台を4度も出しており、安定感も抜群です。
WMMも5勝(キプチョゲ選手は9勝)していますし、キプチョゲ選手の台頭前の2013~2014年ごろはマラソン界最強の選手だったと言えるでしょう。東京マラソン2017では2:03’58″の日本国内最高タイムも出していますね。
そんなキプサング選手ですが、トラックでも頂点を極めたキプチョゲ選手と違いトラックでの実績はほぼ皆無です。ですがマラソンでの強さは言うまでもなく、ハーフも58分台持ちなのでまさにロードレースに特化した選手と言えます。
ただ、adidasの契約選手ですので近年はNike ヴェイパーフライの勢いに押されてしまって実績は残せていません。年齢的にも37歳ですが、同い年のベケレ選手が今年のベルリンで輝きを取り戻したように、キプサング選手の復活も期待しています。
キプサング選手のVDOT
やはりフルのVDOTが最も高いです。なお5000mの記録は14分台、10000mの記録は28分台です。積極的に走っていないだけなのでもっと記録は出るはずですが、トラックで記録を出すことに興味がないのでしょう。
次にマラソンのVDOT83.4での等価タイムを見てみます。
数字的には5km12分台、10km26分台は出せるポテンシャルがあると思います。ハーフはほぼPB通りですね。
キプサング選手の週間練習例
キプチョゲ選手の練習の流れと似ていると思います。週3回のポイント練でファルトレク、トラック、ロングランというバランスも同じです。
ただ多くのエリートランナーと違って完全休養の日を日曜に入れています。週間走行距離も190kmくらいが限界のようです。キプチョゲ選手もこのくらいでしたね。
水、金のEasyランは遅めですが、月のEasyというかModerateランは少し速めです。トラック練習もTペースを意識したもので、特段変わったことはなさそうです。ファルトレクについては特定の能力を高めるためというよりは総合力を高めるためといった感じでしょう。その当たりはトラック練習との住み分けが出来ているのだと思います。
また、キプサング選手はコーチをつけずセルフコーチングで練習していることでも有名ですが、たまにイタリア人コーチのレナト・カノーバ氏に練習メニューの相談をするようです。
参考までにカノーバ氏の練習メニューの2週間分のサンプルは以下です。
1週目のロングランはかなりマラソンペース近くで走るようなので負荷は高いですね。その分、ファルトレクが軽めになっているのでしょうか。
2週目は逆にファルトレクが高強度でロングランが低強度になっているようです。練習の流れは同じだけど、週によってメインとする練習を考えて負荷を調節している感じですね。
なお参考までにキプサング選手のVDOT83.4における練習ペースは以下です。
まとめ
- キプサング選手はキプチョゲ選手に唯一マラソンで勝ったことがある選手で、2013~14年あたりは最強だったよ
- トラックの実績はないけど、ロードでの高いレベルでの安定感は近年のマラソン界では屈指だよ
- 練習の流れはキプチョゲ選手と似ているけど、完全休養を入れていたり、週によってメインとする練習を変えてメリハリをつけている印象だよ
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