市民ランナーにとって練習時間の確保は重要な問題です。平日は仕事が忙しくてまとまった時間が取れず一切練習できない、もしくは短時間しか練習できないという方は多いと思います。
また、週末なら何とかまとまった時間が取れて長い時間練習できるという人もいるでしょうし、家族サービスや育児のため週末は練習できないという人もいるでしょう。
では週末に長時間走る練習と、平日に短時間高強度に走る練習、総練習時間が同じならどちらが効果的なのでしょうか?
そんな疑問を検証した文献を紹介します。
検証方法
レクリエーションレベルのランナー34人が今回の検証対象です。ランダムに2つのグループに分け、片方のグループ(WE)は週末に合計2時間半の持久系の練習をし、もう片方のグループ(AW)は平日に30分の高強度運動を行います。
つまりどちらも週間の総練習時間は同じ2時間半です。この練習を12週間続けてもらい、効果を比較します。
各グループの練習の内容は以下の通り。強度の基準がLTでの走速度(vLT)を基準にしているのでわかりにくいですね。
vLTがキロ4分なら85%vLTは4’42″/kmくらいですね。ダニエルズ先生の定義ではMペースとEペースの間くらいでしょうか。
AW | WE | |
---|---|---|
月 | 85%vLTで30分走 | – |
火 | 30秒スプリントx10、それ以外は85%vLT走 | – |
水 | 100%vLTで30分走 | – |
木 | 2分疾走 x4~6のインターバル走 | – |
金 | 30秒スプリントx10、それ以外は85%vLT走 | – |
土 | – | 30分から60分の85%vLT走 |
日 | – | 60分から120分の75%vLT走 |
結果
AW | WE | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
Pre | Post | p-Value | Pre | Post | p-Value | |
体重 [kg] | 70.5 (8.1) | 67.6 (7.1) | .01 | 70.5 (9.8) | 68.7 (8.9) | .01 |
体脂肪率 [%] | 22.5 (6.3) | 21.0 (6.6) | .09 | 22.4 (6.3) | 21.4 (6.5) | .02 |
内臓脂肪 [kg] | 5.6 (2.2) | 4.7 (1.9) | .01 | 5.7 (2.1) | 5.4 (1.9) | .01 |
脂肪以外の体重 [kg] | 51.8 (7.3) | 50.8 (7.4) | .27 | 52.1 (9.3) | 51.4 (8.7) | .02 |
安静時心拍数 [b.min-1] | 65.8 (11.5) | 57.8 (13.0) | .01 | 70.1 (12.3) | 60.6 (7.6) | .01 |
VO2max[mL.kg-1.min-1]# | 36.8 (4.5) | 43.6 (6.5) | .01 | 38.8 (5.0) | 41.5 (6.0) | .01 |
最大速度 [km.h-1] | 11.9 (1.6) | 13.9 (2.1) | .01 | 12.8 (1.8) | 14.0 (1.9) | .01 |
最大血中乳酸濃度[mmol.L-1] | 7.6 (2.2) | 7.9 (2.2) | .39 | 8.7 (2.0) | 9.2 (2.2) | .31 |
LT速度(vLT) [km.h-1] | 9.7 (2.2) | 11.7 (1.8) | .01 | 9.9 (1.3) | 11.2 (1.7) | .01 |
体組成
どちらのグループも体重、体脂肪率、内蔵脂肪などは改善されており、有意な差はなさそうです。
心拍数
安静時心拍数はどちらも下がっています。トレッドミルテストではAWの方が特に低かったようです。
有酸素運動能
VO2maxについてはどちらも向上していますが、AWの方が有意に良いという結果でした。vLT以上の負荷はかかっていないですが、レクリエーションレベルのランナーということでこの負荷でも向上幅は大きいようです。
またvLTもどちらのグループでも向上していますが差はみられなかったようです。
ハーフマラソンのタイム
12週間のトレーニング後、ハーフマラソンを走ってもらいました。
その結果はAWが平均2時間14分、WEが平均2時間17分と大きな差はなかったようです。
まとめ
- レクリエーションレベルのランナーにおいては高強度短時間の練習と、低強度長時間の練習ではどちらも体組成、心拍数、有酸素運動脳いずれも改善するよ
- 高強度短時間のグループの方がVO2maxの向上幅は有意に高かったよ
- 同じ時間をかけるなら短時間高強度運動の方が効率よく持久走の能力を高められる可能性があるよ
感想
生活スタイルに応じて様々な練習スタイルがありますが、その比較という点で興味深い論文です。
レクリエーションレベルなので、VO2maxレベルで走らずともVO2maxはかなり上昇していますね。
低強度組に関してはLTにも達しない速度でしか走っていませんが、vLTもかなり向上しています。
まさに走れば走るだけ走力が上がると感じるであろうボーナスゾーンだと思います。
これが鍛えられたランナーだとまた違った結果になるとは思います。おそらく高強度短時間組と低強度長時間組の差は広がるのかなと予想します。
そして高強度短時間の練習でも頭打ちになると、今度は長時間の練習が必要になってくる、というのが私の感覚です。
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