ヒルトレーニング、いわゆる坂ダッシュや坂インターバル、峠走については多くの方が取り入れている練習だと思います。
トレーニングとしてはかなり昔からランナーの間で広まっていたようですが、そのトレーニング効果についての科学的な研究は近年まであまりなかったようです。
しかし、ここ数年の研究によりヒルスプリントの効果が科学的にも実証されつつあり、近所に坂がある人はもちろん、近くにない人は遠出してでもやる価値がある練習だと思います。
そんなヒルトレーニングの効果についての研究例についていくつか紹介します。
エチオピアのクラブチームでの実証例
エチオピアのクラブチーム「Oromia Water Works Athletics Club」に所属する800mから10000mまでの選手32人について、無作為に対照群と実験群に分けて12週間のレーニングを行います。実験前の各グループ間のフィットネスレベルは同等ということでした。
トレーニングの詳細は書かれていないのですが、実験群は40分-60分のヒルトレーニングを週2回行ったようです。
6週間、12週間経過時に生理学テストを行ったところ、ヒルトレーニングを行った群の方がVO2max、安静時心拍数、スピード持久力(300m AT)、レースタイムが有意に向上したという結果でした。
複数のヒルトレーニングパターンを試した研究例
こちらの研究では、20人のよく訓練されたランナーについてランダムに5種類のヒルトレーニングを6週間実行してもらい、その効果を測定しました。
この研究の目的は5種類のトレーニングについて最適なパラメータを見つけることでしたが、5kmのTT結果からトレーニング間で有意な差はなかったものの、平均で5kmのTTが2%向上したようです。
ヒルトレーニングが有効なメカニズム
これらの文献でヒルトレーニングの有効性については以下のように主張しています。
- 筋繊維の関与が増える
- コア(体幹)をより使用するようになる
- 故障のリスクが少ない
重力に逆らって体重を上に運ぶために平地よりも筋繊維の動員が増えるでしょうし、傾斜のある地面を強く蹴るためにコアの安定も重要でしょう。またスピードは平地より出ないので着地衝撃も少なく、部位によっては故障リスクも低いとは思います。
あとは個人的な感想ですが坂の方が平地よりも追い込めそうな気はしますね。着地筋の代謝が減って推進力への代謝割合が増えるためでしょうか?
ヒルトレーニングの種類
刺激時間に応じて分類すると以下のようなイメージです。
- スプリント系(数十秒)
- インターバル系(1分~数分)
- テンポ系(10分~数十分)
それぞれ刺激する代謝能が異なるので目的も異なりますが、自分の強化ポイントを意識してこれらのトレーニングに取り組みたいですね。
スプリント系ならば短めの坂でもできますが、インターバル系やテンポ系になるとできる場所も限られてくるので、これらができる環境であればぜひ取り入れるべきでしょう。
まとめ
- ヒルトレーニングは多くの方が取り入れているけど科学的にも実証されているトレーニングだよ
- 故障リスクが低くて筋繊維の動員率を高められるよ
- 最適なパラメータ等の研究については十分じゃないけど、強化ポイントに応じてスプリント系、インターバル系、テンポ系を使い分けたいよ
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