多くの方が練習の参考にしているであろうVDOT。1979年に発表された式なのですが40年経った今も使える素晴らしい公式です。計算式自体は単純なので誰でも実装はできますが、Web版やアプリ版が手軽なので多くの方が利用していると思います。
VDOTはレース結果から求まりますが、ここ数年あるシューズの登場がこの計算を難しいものにしています。そのシューズとは言うまでもなくヴェイパーフライ。
レース時はヴェイパーフライを着用しても、高価なシューズなので普段の練習では履かないという方がほとんどかと思います。そのためヴェイパーフライで出したタイムでVDOTを計算し、そこから練習ペースを求めると本来のVDOTより高い数値で見積もられる可能性があります。そのVDOTを元にした練習ペースがこなせるならいいのですがこなせない場合は設定を見直す必要があるでしょう。
今回はヴェイパーフライで出したタイムをVDOT計算機に入れた場合に、非ヴェイパーフライで練習する場合の補正方法について考察してみます。
ヴェイパーフライによるランニングエコノミーの改善について
ヴェイパーフライは2代目まで4%とついていた通り、ランニングエコノミーが平均4%改善するとされています。あくまでランニングエコノミーであって、タイムもしくはその逆数の速度ではないことは注意する必要があります。
また平均4%なのでバラツキがあり、検証論文では1%~6%までバラツキがありましたが、被験者全員のランニングエコノミーを改善しておりこれは驚くべき結果と言えます。1%の改善でもシューズの重さ100g分に相当すると言われていますからね。
ランニングエコノミーの改善分をVDOTに反映
ヴェイパーフライでランニングエコノミーが改善するとして、VDOTにはどのように補正をするべきなのでしょうか。
まず、ある距離のレースを走れるVO2を固定して考えると、ランニングエコノミー4%の改善は速度3.4%の改善に相当します。そのため、非ヴェイパーフライではこの3.4%分遅くしたタイムを算出し、VDOT計算機に与えることで非ヴェイパーフライ時のVDOTが求まります。
速度とランニングエコノミーの関係については以下の記事を参照してください。
例えば私のVF記録は5000m 16’18″ですが、この速度から-3.4%すると16’55″となってしまいます。16’55″は私の初出走時の記録と同じでワースト記録ですが、さすがに非ヴェイパーでもここまで遅くはならないです。
非ヴェイパーのPBは16’31″ですが、16’18″出したときは練習時の感覚でもこのときより確実に走れる感覚はありました。おおよそ1%の差ですね。
なので私の場合はヴェイパーフライで4%も恩恵を受けられておらず、せいぜい1%程度しか恩恵を受けられていないとも考えられます。まぁ1%でもかなり大きいんですが。
なお非ヴェイパーで5000mが16’18″→16’30″になったと仮定すると、VDOTは63.2→62.3と0.9下がります。非ヴェイパーで練習時にはこちらのVDOTにより算出された練習ペースを使うべきですね。
これだとEペースも4秒ほど落ちることになり、Eペース下限の59%VO2maxで計算すると4’55″/kmでこのペースなら疲労が溜まった状態でもEasyと言えそうで、だいぶ気楽に走れそうです。
まとめ
- ヴェイパーフライを使ったレースタイムからVDOTを計算する場合は、本来のVDOTより高く出る可能性があるよ
- ヴェイパーのランニングエコノミー改善分から速度改善分に変換してタイムを補正できるよ
- 自分が何%の影響を受けているのかの判断は難しいけど、その分を補正した方が真の練習ペースとしては適切だと考えられるよ
コメント