シューズの重要な機能であるクッション性能。クッションの主な役割としては、着地筋の仕事を減らしてランニングエコノミーを向上させることと、故障リスクの低減が挙げられると思います。
ヴェイパーフライなどのスーパーシューズの登場以来、厚底のクッション性能が高い靴により故障が減ると主張する人もいますが、一方でスーパーシューズにより股関節などに深刻な故障を抱える人が増えたと主張する人もおり、コンセンサスは得られていないと思います。
この疑問に対する解ではないですが、シューズのクッション性能と故障リスクについて実験した文献があったので紹介します。
実験方法
健康的な848人が被験者。
クッション性が異なる2つのシューズのプロトタイプのうち1つをランダムに使用しました。これらのシューズは、ソフトバージョン(61.3±2.7N/mm )とハードバージョン(94.9±5.9 N/mm)で全体剛性が大きく異なっています。
また被験者たちは体重の中央値(男性78.2kg、女性62.8kg)で軽いグループと重いグループに分かれました。
これらのシューズを履いて6ヶ月のランニング活動と故障に関してモニタしました。1週間以上走れない程度の故障をカウントしているようです。
結果
体重別で分けずに全体で見た場合、ハードバージョンを履いたランナーの方が故障確率が高かった(SHR 1.52 ※soft-lightを1とした相対値)ようです。
体重別のグループで見た傾向では、軽いランナーはハードバージョンでより高い故障率(SHR 1.80)を示しましたが重いランナーではその傾向がありませんでした(SHR1.23)。
感想
重いランナーの方が着地衝撃が大きいはずで、よりクッション性の高いシューズが必要になるだろうと予想しましたが、軽いランナーの方がクッションがないシューズの故障リスクが高いということで、直感的な印象とは異なりました。
散々言われている通り、やはりクッション性が悪い(≒反発性が高い)シューズの方が故障率が上がるという傾向がデータとして確認できました。故障しやすい初心者にはまずクッション性の高い厚底のシューズを勧めるのはベストプラクティスとして間違っていなかったということですね。
一方、クッション性と反発性を両立しているスーパーシューズでの影響はまだ未知数なところがあります。これは今後の研究に期待ですね。
まとめ
- 一般的に言われるようにクッション性の高いシューズの方が故障リスクを低減することがデータとして確認できたよ
- 直感に反して、重いランナーよりも軽いランナーの方がクッション性の低下による故障リスクが上がるよ
- クッション性と反発性を両立しているスーパーシューズに関してはまだデータが少ないので今後の研究に期待だよ
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