量か質かに関する私見

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雑記
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ランナー界隈では月末になると今月何キロ走ったという報告で溢れるのが恒例です。走行距離は練習量を表す単純な指標なので、どれだけの量をこなしたかを他人に伝えるには大変シンプルでわかりやすく、広く浸透しています。ただ、この走行距離を信奉するあまり、月末に帳尻合わせで距離合わせをするといった事例もそれなりに見受けられる気がします。

私見ですが、ランナーは走行量重視派と質重視派に大きく二分されると思っています。走力を向上させる手段に正解はなく、肯定派、否定派ともそれぞれの成功体験から来ていると思うので、結局は個人の問題、ということになるのかもしれませんが、どちらの派閥にも属していたことのある私の意見を書いておきます。

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量重視派

マラソン界の格言でおそらく最も有名なのが、野口みずき選手が残した

「走った距離は裏切らない」

ではないでしょうか。なお本人は距離ではなく努力は裏切らないと言いたかった、と後のインタビューで語っています。この言葉がひとり歩きしている感はありますが、この言葉を励みにとにかく距離を走り込んで結果を残す人もいます。

私見ですが、このタイプの方はマラソンを走るためにはとにかく距離を踏むのが大事、ポイント練の質を多少落としてもとにかく走って目標距離を達成しようとする、という考え方の方が多いと思います。

ほとんどの方は、ランニングを始めて初期の頃はジョギングを続けていくだけでも走力はどんどん向上していきます。走れる距離が伸びていくと走力も加速度的に伸びていくと思います。その成功体験もあって距離を踏むのは正義、という感覚になるのは自然な流れだと思います。

質重視派

仙台育英高→トヨタ自動車九州で日本の練習を経験し、北京五輪マラソンで金メダリストとなったサムエル・ワンジル。

彼は、

「日本人は練習しすぎて疲れちゃってる。自分は練習量を少なくしてもらってきた」

と発言しており、日本のマラソン界はオーバートレーニングにより逆に遅くなったり故障が増えていると指摘していました。

このように、距離を踏むよりもスピード練習に集中した方が結果的に走力は向上する、という主張をする方も多いと思います。

このタイプの方は、狙ったタイムを出すために効率的に練習したいので無駄な練習は極力省きたい、という考え方の方が多いと思います。伝聞ですが、ジョグを一切しないでポイント練のみ月間100kmでサブ3達成、という人もいるようです。

今までスピード練習をやっていなかった方がスピード練習に取り組むようになると飛躍的に走力が向上することは多いです。そのため、ジョグ量を減らしても走力向上には影響ないと感じることもあるでしょう。

ランニングはかなり時間を使ってしまう趣味なので無駄を極力省きたいというのも自然な考えです。

私の考え方の変遷

私は当初は距離信奉派でした。とにかく走る量を増やせば走力が向上すると思い込んでおり、距離を踏むことを基本にスピード練習を週2で取り入れることでサブ3までは達成できました。

ただその練習では月間走行距離350kmあたりから練習量の確保が厳しくなり、そこから走力は停滞してしまいました。そこで出会ったのが「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」で、各練習の目的を考えるようになりました。

そこからポイント練習の質重視になり、ジョグ量を落として月間250kmほどにしましたが走力は2時間40分台まで向上しました。

ただ、そこからまた走力が停滞したので、質重視はそのままに、Eペース量を増やして週間100km超、月間450kmほどの練習に転換して5000m16’18″、2時間38分台とそれぞれPB更新できました。

まとめると、

  • サブ3までは量重視
  • サブ45達成までは質重視
  • サブ40達成は質は大前提で質に裏付けられた量も必要

という流れになります。

この考えに至った背景

まず陸上競技経験のない市民ランナーがマラソンである程度以上の記録を狙う場合、常にスピードがネックになってきます。そしてスピード練習をせずにジョグだけやっていてもスピードは一定以上は向上せず、頭打ちになると思います。そのためこの壁を破るためにはスピード練習はまず避けて通れません。この点に関してはほとんどの方に賛同していただけると思います。

そのため、ポイント練習を練習の中心に据えて、それ以外の日はジョグ中心の練習になります。

じゃあスピードを追求するのに、ジョグで長距離を踏む必要があるのかについてですが、「心血管系がネックになってこれ以上スピードが上がらない場合はEペース量を増やす必要がある」と考えています。ポイント練に影響を及ぼさない範囲なら、Eペース量は増やせるだけ増やした方がいいですが、そうなるとリカバリが追いつかなくなるし、練習時間の問題もありますから落とし所は考える必要はあります。

Eペースは心血管系の強化が主な目的ですが、私自身、この量を増やしたことで増やす前と比較すると心拍数が目に見えるレベルで下がりました。心筋が強化され、1回の拍動により押し出される血液量が増えたのだと思います。

最大心拍数は年齢を重ねるごとに徐々に下がってきてはいますが、このEペース量増加による心血管系強化の方が今のところ上回っているため、数年前から始めた5000mでも今のところ毎年PBが出ています。

つまり、スピード練習の質を確保するのは大前提で、Eペースという「一定の質」に裏付けられた量を積み上げることで、さらなる走力アップのための器を作ることができる、という考えに至りました。

以上を踏まえて、

質は量を生む
量は質を生まない

だと思っています。どちらも重要だけど、どちらかに力点を置くなら質、ということになります。

Eペースより遅いジョグについて

ランナー界隈では信奉者も多い、LSD、スロージョグ、ゆるジョグ、疲労抜きジョグ等、の遅いジョグによる練習について、私は一定以上のレベルでは否定的です。効果がないとは言いませんが、時間効率の問題です。走力レベルが上っていくにつれてやらなければならない練習は増えていきます。市民ランナーはただでさえ苦労して走る時間を捻出しているわけですから、それを時間効率の悪い練習に費やすのはもったいないと思います。

もう1つの理由としては、走動作が遅いペースに慣れてしまって崩れてしまう点。走る速度によってフォームは変わってきますから、ゆっくりしたペースでいくら丁寧にフォームを意識したところで、スピードを出す動きとは異なってきます。複数フォームを器用に使いこなせる方なら問題ないのかもしれませんが、私のように不器用な方はすぐメインのフォームを崩してしまい、ランニングエコノミーに悪影響が出ると思います。

疲労抜きジョグに関しては、アクティブレストとして血液の循環を良くして疲労物質を追い出すことが目的と言われますが、結局走る動作をするので少なからず筋肉にダメージはあります。それならウォーキングやバイクの方がアクティブレストとしては効果的だと思いますし、お風呂に長めに入る等でも疲労物質を出すという目的は達成できるはずです。結局疲労抜き”ジョグ”にこだわるのは距離信仰があるからだと個人的には思います。

ただ、まだ走力レベルが低くスピード練習が不要なレベルなら、故障リスクの低いこれらのスロー系の練習に時間を費やすのもいいとは思います。

まとめ

  • 質と量のどちらを重視すべきかはいろんな考えがあるので難しい問題だよ
  • どちらも重要だけど、筆者は質を確保するのが大前提でさらに質に裏付けられた量を積み上げるのが最良だと考えてるよ
  • 遅いジョグも時間効率やフォームへの影響を考えたら積極的にオススメはし辛いよ

 

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ごっきー
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元ネトゲ廃人が福岡国際マラソンを目指すブログ

コメント

  1. ちちかか より:

    毎回興味深く拝見させていただいております。
    広く意見をとということなので私感を・・走力は筆者さんと同じくらいです。

    まず、ランナー界隈で月間距離が話題になるのはただの挨拶ですね(笑)
    実際数字には反応しても中身について突っ込んで聞いてくる人はあまりいません。
    そもそも、インターバルも距離走もしっかりやってる前提で練習量を聞いているので聞く必要がないのかもしれません。

    そして、誰々は月間何キロでサブ⚪︎出来たというやらない自慢は無意味と思います。
    極端な例え、学生時代5000m14分そこそこで走っていた人なら30年経っても半年くらい軽く準備すればサブ3など簡単でしょうが、運動が大の苦手な人なら20歳台で始めて月間300キロを10年続けてもサブ3出来ない可能性は十分にありますよね。

    つまりスタートラインが違います。
    質か量かの話では、志が高ければ両方必要になるのではないでしょうか?
    この手の話なると大抵の場合は量を否定する流れが目的になりますが、サブ20を目指す凡人が月間200キロで達成できますか?

    それはサブ3に話を下げても同じです。先の例に出した後者にとっては、筆者さんにとってのサブ30のハードルがサブ3なのです。つまり才能を含めたスタートラインが違うのです。

    • ごっきーごっきー より:

      ちちかかさん、コメントありがとうございます。

      >誰々は月間何キロでサブ⚪︎出来たというやらない自慢は無意味と思います。
      同感です。効率的に練習して少ない練習量で目標を達成することは理想ではありますが、各々運動経験や先天的なポテンシャルが違うので、あくまで一例であって万人に当てはまるものは決してありえないと思っています。

      >質か量かの話では、志が高ければ両方必要になるのではないでしょうか?
      私の文章力のせいで伝わらなかったかもしれませんが、私も今はこの考えです。ただ量を踏むにしても例えばサブ3レベルの人がキロ6とかで走りまくっても練習効率が悪いので、ジョグをするならEペースでしっかり走る、疲労を抜くならウォーキング等でアクティブレスト、もしくは完全休養、とメリハリをつけるのがいいのかな、というのが私の考えです。