Iペースとその目的
IはIntervalの略だ。あらゆるタイプのトレーニングの中で、これほど解釈に幅があるものもないだろう。
ところでやる夫くん、インターバルトレーニングの定義とは何かね?
速く走って、ちょっと休んで、また速く走るを繰り返すトレーニングだお
その速く走るとはどれくらいの時間で、ちょっと休むというのもどれくらいの時間かね?
速く走るのは最低2分以上ぐらいかお、休むのも次の疾走の準備ができるかだお
やらない夫くんはどう考える?
市民ランナーの間で一般的にやられているのは1000mの疾走と200mのレストを繰り返すパターンでしょうか。レストは90秒前後が多いかと。
ふむ、どうやら二人の定義も一致しないようだね
このようにインターバルトレーニングとは人によって定義が全く異なる。共通するのはきついランニングと休息からなる断続的なトレーニングだ、というだけだ
そこで私はインターバルトレーニングの定義を独自に行うことに決めた。インターバルトレーニングの目的は、有酸素能力、すなわちVO2maxの向上だと考えると最も理にかなう。
特異性の原理からするとVO2maxを向上させるためにはVO2max付近の負荷をかけなければいけないのでしょうか
そうだ。そのための疾走時間と休息時間も、このトレーニングの目的を十分に達成できる比でなければならない
VO2maxで疾走すると何分間持つんだお?
おおよそ11分間だ。もちろんここまで疾走時間を長くするのは良くない。Iペースで走る時間は3分~5分にするのが適正だ
1000mのインターバルならおおよそこの範囲に収まると思いますが、400mのインターバルではこれよりもかなり短くなるのでは?
それはあとで説明するが、レストを短くすることで対応可能だ
5分以上走るのはどうなんだお?
やってみるとわかるが3000m~5000mのレースペースで5分以上の疾走を何本も行うのはきつい。しかも合間に休息を長く取らないとVO2は完全に回復せず、次の一本ではより短い時間でVO2maxに達してしまい、最後までそのペースが持たないかもしれない
VO2maxへの到達
安静時からIペースで走ったときにVO2maxに達するには約2分かかる。下の図を見て貰えばイメージしやすいと思う。
Iペースよりも速く走ったらもっと早くVO2maxに達してお得になったりしないのかお?
残念ながら速く走っても到達時間はほとんど変わらないだろう
むしろ速く走った方が酸素負債が多すぎて、途中で失速して適正ペースで走れなくなるかもしれない。適正ペースより遅くなればVO2maxで走っていることにならないのだ
じゃあインターバルで最初に速く入りすぎて、後半失速する練習は効果が低いってことかお?
そのとおりだ。その練習の目的が苦しむことなら目的は全うできたと言えるが、VO2maxの負荷を15分かけることが目的ならそれは全く達成できなかったことになる
Iペースの時間が3分~5分で、VO2maxへの到達が2分なら、この2分を差し引いた1~3分×本数がVO2maxを刺激できる時間ということですか?
そうだ、ただこれより短い時間でもリカバリを短くすればVO2maxの刺激時間を長くすることはできる
例えば400mでインターバル走をやる場合、レストを約40秒にすると2本目以降はVO2が既に上昇した状態でスタートするため、短時間でVO2maxに到達する
400mインターバルでレスト40秒はかなり短い印象ですね。他の距離のレストについてはどう考えたらいいでしょうか?
800mなら2分、1000m~1200mなら3分、1600mなら4分前後がいいだろう。疾走時間よりも若干短めがいい
市民ランナーでよくやられているレスト200mとかなら、90秒前後が多いと思いますがそれよりは大分長いですね。レストは短くしなくていいのでしょうか。
VO2maxペースで狙った時間走れるなら短くしてもかまわないだろう。先程述べたように設定を守れないほど短くしては本来の目的を達成できない。苦しむことが目的ならそれでいいのだがね
ただ、レスト90秒で1000m走れるようなペースなら、それは本当にVO2maxペースなのか疑問だろう。レストを長くしてもっと速いペースで走れるはずだ
Hランニング
インターバルトレーニングは決められたペースで行うとは限らない
きついと感じるランニング(Hランニング)を繰り返すだけでもインターバルトレーニングになる
Hランニング・・・なんか卑猥だお
いや、HardのHだろ。卑猥な要素なぞまったくなく、吐き気がする練習だぞ
Hランニングはペースではなく体感なので、時間で決める。(H3分・レスト2分) x6という表記になるだろう
Iペースの%vVO2maxによる定義
Iペースの定義はどれくらいなんだお?
ここまでの説明から想像がつくだろうが、95%~100%VO2max、97.5%~100%HRmaxだ
VO2maxを刺激すると言っているのだからほぼVO2maxの上限ですよね・・・
Iペースの上限
Iペースにも上限があるのかお?
週間10kmか、週間走行距離の8%のどちらか短い方だ
週間100kmの選手でも8kmまでなんですね。週2回はやらないほうがいいと。
Hランニングについてはどう考えるんだお?Hランはペースじゃなくて時間で管理するから距離がわからんお。
Hランニング5分につき1.6kmに換算するのがいいだろう
Iペースのトレーニング例
・週間走行距離64kmまで:(I 1km・ジョグ3分)x4~5
・週間走行距離72kmまで:(I 1.2km・ジョグ3分)x4~5
・週間走行距離88kmまで:(I 1.2km・ジョグ3分)x5
・週間走行距離113kmまで:(I 1.2km・ジョグ3分)x5~6
・週間走行距離113km超え:(I 1.2km・ジョグ3分)x6~8
まとめ
インターバルの考え方についてよくわかったお
苦しい練習だからこそ、効果を最大化するような設定でやりたいですね
次回はRペースだ。有酸素能を超えたペースでの練習なので市民ランナーにとっては馴染みがないかもしれないが、ランニングエコノミーを鍛えるために重要な練習だ
最終的にはこのペースがボトルネックになって走力が停滞することも多いですかね
レペティションもインターバルとは違ったきつさのある練習だが、ぜひ取り組んでほしい
つづく・・・
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