
さて、前回まででトレーニングの期分けについて基礎的な部分については説明した

フェーズⅠ~Ⅳに分けてE→R→I→Tと速い方から遅い方の刺激を増やしていくやり方だったお

今回は5km~10kmまでのトレーニングについて紹介していく
5km~10kmレースの特徴

5kmと10kmって近いようでけっこう走り方が違うような気がするのですが・・・

そのように感じるのももっともだ。5kmは95~98 %VO2maxで走れるのに対して、一般の市民ランナーでは30分以上かかるであろう10kmは90~94%VO2maxでしか走れない

Iペースの最大持続時間はたしか11分だったから、5kmだとIペースに近いけどそれよりやや遅めになるのかお?

その通りだ。

10kmの方は普通はTペースよりやや速めになりますね。Tペースは最大で60分程度走れるスピードということでしたから、キロ6分がTペースの方はちょうどTペースで10kmを走ることになります。

うむ。2人ともよく復習しておる。

このように5kmと10kmの走り方は違うが、似ている部分もある。

5kmは3km以降、10kmは6km以降がきつい感じだお

そうだ、レースの2/3あたりの一番きつい地点でどれだけペースを維持できるかがこの距離をうまく走るコツの1つだろう

この距離で必要な能力はどのようなものでしょうか?

VO2max、ランニングエコノミー、LTをバランス良く織り交ぜることが重要だが、人によっては1つに集中したほうがうまくいく場合もあるだろう

バランスも重要だけど、特化したほうがいい人もいるってことかお

以前、ランニングエコノミーの個人差を説明するときに用いた速度とVO2の関係グラフを思い出してほしいが、あのように個人差が生まれるのはそもそもの生理学的能力に差があるか、あるトレーニングを重視した結果かの2通りが考えられるだろう。

ただ、どちらにせよ、各タイプのトレーニングは必ずプログラムに組み入れ、おざなりにしているトレーニングタイプが決してないようにしなければならない

なんとなくこの距離の特徴がわかってきたので各フェーズの考え方も教えてほしいお
フェーズⅠ

すでに基礎ができている場合はこのフェーズは飛ばして構わない

しかし、トレーニングを中断していた場合などはこのフェーズを4~6週間取り組むべきだろう

どれくらい走ればいいのかお?

自分で妥当だと思う1週間の走行距離を決めたらその距離を変えずに3~4週間その距離を守り、その後伸ばしていく

どれくらい伸ばせばいいんでしょう?

練習1回につき1.6kmがいいだろう。週に5回練習しているなら、週8kmだ。3~4週間継続したらまた増やしても良い

一度に一気に量を増やしたら故障するからこのような制限をかけているのかお?

そうだ。故障耐性を高めるフェーズなので、練習量の増加は慎重に行うべきだ

1回の最高距離はどれくらいがいいのかお?

週1回はLランニングを取り入れるのもよい。最大でも週間走行距離の30%までだ。

週間100km走るならLランニング1回で30kmまでということですね

あとはウィンドスプリントも8~10本、週3~4回取り入れるのもいいだろう。フェーズⅡの準備になる。
フェーズⅡ

フェーズⅡではRランニングが新たに加わるお

Rペースの練習は週間走行距離の5%までにしよう

ペースは直近のレースのVDOTから設定するか、1500mのレースタイムを控えめに予想してそのペースで走るのもいいだろう
フェーズⅢ

Iペースでのインターバルが新たに加わるお

5kmと10kmには最も必要なトレーニングだろう

とても楽とは言えない練習だが、1回の練習で走るIペースの距離は週間走行距離の8%までにし、10kmも超えてはならない

負荷の高いペースですので、故障には十分気をつけたいですね

Iトレーニングを週2回行えば、1週間の練習としては十分だろう

ペースは直近のVDOTで決めるか、フェーズⅡで行っていたRペースより400mあたり6~8秒遅いペースがいいだろう

Rペースが72秒なら78~80秒というところですね
フェーズⅣ

Tペース中心のフェーズだお

試合も近いのでフェーズⅢよりもきつくしない方がいいだろう。Tペースにフォーカスが移るが、Iペース、Rペースも時折追加する必要がある

本命レース前に調整レースを入れる場合はどうしましょうか

レース前の2日か3日はEデーに設定し、ポイント練(Qトレーニングは)1回省略しよう

レース後もレース距離3kmにつきEデーを1日入れたい

10kmレースならEデー3日で回復を図るのですね
具体的なトレーニングプログラム例

週間走行距離64~80kmのランナー向けと、97~112kmのランナー向けの2種類を用意した。これに当てはまらないランナーもこのプログラムから各自調整してほしい
週間64km~80kmのトレーニングプログラム例
フェーズⅡ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x10 | |
火 | Q2 | E3.2km [(R200m・ジョグ200m)x8]x2(セット間ジョグ800m) E3.2km |
水 | Eデー、WSx8 | |
木 | Eデー | |
金 | Q3 | E3.2km (R200m・ジョグ200m)x4 (T1.6km・休息1分)x2 (R200m・ジョグ200m)x4 E3.2km |
土 | Eデー、WSx8 |
フェーズⅢ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x10 | |
火 | Eデー | |
水 | Q2 | E3.2km (I1.2km・ジョグ3分)x4 E3.2km |
木 | Q3 | E3.2km (T1.6km・休息1分)x4 E3.2km |
金 | Eデー、WS x8 | |
土 | Eデー、WS x8 |
フェーズⅣ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x6 | |
火 | Q2 | T4.8km、E3.2km |
水 | Eデー | |
木 | Eデー | |
金 | Q3 | (I1.2km・ジョグ3分)x5、E1.6km |
土 | Eデー |
週間97km~112kmのトレーニングプログラム例
フェーズⅡ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x10 | |
火 | Q2 | E3.2km (R200m・ジョグ200m)x4 (R400m・ジョグ400m)x6 (R200m・ジョグ200m)x4 E4.8km |
水 | Eデー、WSx8 | |
木 | Eデー | |
金 | Q3 | E3.2km (R200m・ジョグ200m)x4 (T1.6km・休息1分)x4 (R200m・ジョグ200m)x4 E3.2km |
土 | Eデー、WSx8 |
フェーズⅢ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x10 | |
火 | Eデー | |
水 | Q2 | E3.2km (I1.2km・ジョグ3分)x6 E4.8km |
木 | Q3 | E3.2km (T1.6km・休息1分)x6 E3.2km |
金 | Eデー、WS x8 | |
土 | Eデー、WS x6 |
フェーズⅣ
曜日 | Q | 練習内容 |
日 | Q1 | Lランニング(週間走行距離の25%か120分間走の短い方) |
月 | Eデー、WS x6 | |
火 | Q2 | (T3.2km ・休息2分)x3、E4.8km |
水 | Eデー | |
木 | Eデー | |
金 | Q3 | (H4分・ジョグ3分)x6、E1.6km |
土 | Eデー |
まとめ

5kmと10kmに求められる能力は若干異なるが、両方得意にしている選手も多いように共通点もある

キプチョゲ選手も元々は主に5000mで活躍していた選手でしたね

2003年パリ世界陸上5000mのエルゲルージ vs ベケレ vs キプチョゲは歴史に残る1戦だろう。見たことがない人は是非見ておくように

次回はマラソンに向けたトレーニングを紹介する
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