【論文紹介】ヴェイパーフライ vs スパイク

スポンサーリンク
厚底シューズ
出典:https://letsruncomjapan.com/
この記事は約5分で読めます。

以前、Nike ヴェイパーフライ 4%は実験室レベルでランニングエコノミーを平均4%改善することを紹介しました。

ただヴェイパーフライはロード用に開発されたシューズで、エリート選手においてはトラックレースではスパイクを使うことが多いです。

ただ設楽悠太選手や新谷仁美選手など、一部のアスリートはトラックレースでもヴェイパーフライを着用しています。海外のアスリートも同様にヴェイパーを好む選手がいます。

またリオ五輪の女子トライアスロンで金メダルを獲得し、その後出産を経てマラソンに転向したグウェン・ジョーゲンセン選手など一部選手は、ヴェイパーフライにスパイクプレートを付けたカスタム品を使っていたりもします。

出典:https://letsruncomjapan.com/

ではトラックレースではヴェイパーフライとスパイク、どちらの方が速く走れるのでしょうか?

以前紹介した論文でもヴェイパーフライと比較したのはZoom Streak 6とadizero japan 2のみで、スパイクとは比較していません。

その疑問に答えるため、この記事ではヴェイパーフライとスパイクの差について私の体感、および実際にエリートランナーのランニングエコノミーを比較した論文について紹介します。

スポンサーリンク

長距離用スパイクについて市民ランナーの感想

陸上競技経験のない市民ランナーのほとんどはスパイクシューズとは無縁かと思います。私も5000mに取り組みだした頃はマラソンシューズで走っていましたし特に不満もなかったです。

ただ一流選手はみんなスパイク履いているし、どんなものか試してみたかったので16’30″切りを狙っていた時期にNike Zoom Matumbo 3を購入しました。このスパイクはロンドン五輪のトラック競技で2冠を達成したファラー選手など、多くのアスリートが着用していたモデルですね。

出典: https://bismarcktribune.com/

まず第一印象はとにかく軽い。100gちょっとくらいしかありません。アウトソールもペラペラなので着地の衝撃もダイレクトに来ます。相当筋力がないと脚が持たなそうでした。

とりあえずレース(東海大記録会)で1回使いましたが16’35″と微妙。ただかなり蒸し暑さがあった日だったので、条件がよければ16’30″を切って当時のPBまでは出せたと思っています。

その次のレースではヴェイパーフライ4% FKが入手できたのでそちらを試してみたら断然ヴェイパーフライの方が楽にスピードが出ました。

というわけでこのレベルの陸上競技未経験者の視点では、スパイクよりも断然ヴェイパーの方が楽にスピードが出せるという感触です。

なお、このスパイクはその後400mなど短距離のレペティション用になりました。

論文での比較

では、私よりも遥かに走力が上のエリートランナーにとってはどうなのでしょうか?その疑問について研究したのが以下の論文です。

A Randomized Crossover Study Investigating the Running Economy of Highly-Trained Male and Female Distance Runners in Marathon Racing Shoes versus Track Spikes - Sports Medicine
Background Running economy represents a complex interplay of physiological and biomechanical factors that are able to adapt chronically through training, or acu...

この論文は24人のエリートランナー(男性は5000m15分、10000m30分前後、女性は5000m17分前後、10000m35分前後)について、トレッドミル上で5分走行したときのVO2を4通りのシューズ、3通りの速度で比較し、以前の論文の結果を追試するとともに、ヴェイパーフライとスパイクのランニングエコノミーを比較した論文です。

比較対象

以下の4つのシューズについて比較しています。

  • Nike Zoom Matumbo 3(NZM)
  • adizero japan boost 3(ADI)
  • ヴェイパーフライ4%に重りをのせてADIと同じ重さにしたもの(NVF+)
  • ヴェイパーフライ4%(NVF)

実験結果

ヴェイパーフライはマトゥンボ3と比較して平均2.6%、japan boost 3と比較して平均4.2%のランニングエコノミー改善が見られました。

出典: Barnes, Kyle R., and Andrew E. Kilding. “A randomized crossover study investigating the running economy of highly-trained male and female distance runners in marathon racing shoes versus track spikes.” Sports Medicine 49.2 (2019): 331-342.

ランニングエコノミーが2.6%改善すると、走速度は理論上2.27%向上するはずですが、実際に被験者が何名かNVFを履いてレースに出たところ1.9%しか改善しなかったようです。

ただし、これらの選手のトレーニングによる速度向上効果も含まれているので、シューズの違いだけでは説明できずあくまで参考値ですね。

またヴェイパーフライをわざと重くしたもの(NVF+)とjapan boost 3を比較しても2.9%の改善が見られたとのことです。これは軽さ以外の部分でもエコノミーの改善幅が大きいことを示唆しています。

最近の動向

この研究では先程紹介したヴェイパーフライのカスタムスパイクとの比較は出てきていないので、このシューズとの比較も気になりますね。

また、先日のドーハ世界陸上では、ヴェイパーフライの技術をスパイクに応用したシューズがトラック競技で好成績を収めています。トラック用のヴェイパーフライみたいなものだと思うので、今後はトラック競技でロード用のヴェイパーフライを履く選手は減るかもしれませんね。

まとめ

  • 長距離用スパイクはめっちゃ軽いけどペラペラなので、陸上競技経験のない市民ランナーが使いこなすには相当な筋力が必要だよ
  • エリートランナーレベルでも、スパイクよりヴェイパーフライのほうがランニングエコノミーが平均2.6%向上するという研究結果があるよ
  • Nikeのプロトタイプがトラック用のヴェイパーみたいなシューズなので、今後はトラックもこのシューズ一強になる可能性があるよ

コメント