厚底シューズのメリットの一つであるクッション性の高さにより故障が減るという意見を見かけることは多いです。厚底シューズ規制についての議論の中で様々な意見を見てきましたが、故障が減るのだから規制するなという意見はかなり見かけました。
ところが実際に厚底シューズで故障が減るというコンセンサスはまだ得られていないですし、むしろ別の箇所に負荷がかかって深刻な故障を負う選手が増えているのではないかという懸念もあります。
直接故障について調べた文献はまだないと思いますが、厚底シューズによって走り方がどう変わるかについては研究されていてその一連の研究がニューヨーク・タイムズ紙にまとめられていたのでご紹介します。

単発の実験の場合

最初の研究では15人の女性ランナーが参加し、ニュートラルなシューズ(ニューバランス)かHOKA ONEONEの厚底シューズを履いて10mの距離を5回走ったあとトレッドミルで5km走り、別のシューズで再び10m x5を走ります。

走行時はモーションや足への負荷率を測定。
その結果、厚底では負荷率が平均81BW(Body Weight)/s、ニュートラルでは平均60BW/sと厚底のほうが大幅に負荷が高かったようです。また最大衝撃も厚底の方が大きかったようです。

6週間厚底でトレーニングした場合

前回の研究では厚底シューズに慣れる時間がなく、うまく走れなかった可能性があります。そのためこの研究では、6週間厚底シューズでトレーニングを行ってから前回と同様の測定を行いました。
ところが前回と大きな傾向は変わらず、やはり厚底シューズの方が衝撃が強かったようです。
同じシューズで厚さのみを買えた場合

過去2回の研究では異なるメーカーのシューズを使っていたため、その差による影響もあったと考えられます。この最新の研究ではニューバランスの同じシューズについてソールの厚さのみを3通り(最大、ニュートラル、最小)に変えて同じ測定を行いました。
その結果では地面反力のデータについては大きな差がなかったようです。
一方、厚いシューズほど外転する傾向があり、より故障の確率が上る可能性を示唆しています。
3つの研究結果のまとめ
足への負荷率については異なるメーカーのシューズでは差が出てしまいましたが、同じシューズで厚さのみを変えた場合ではほぼ差がなかったので、この点は研究間の不一致があり原因の追求が必要でしょう。
この3つの研究ずべてに携わっているHannigan氏は、ソールが厚ければ厚いほど不安定になり回内する可能性を指摘しています。また厚さによって脳と神経系が混乱し、各ステップでの接地の予測がずれてしまうため、地面をより強く蹴る可能性を指摘しています。
いずれにせよこの分野ではさらなる研究が必要でしょう。私もこの分野の動向については継続してウォッチしていこうと思います。
まとめ
- 厚底シューズだと脚への負荷が増えるというデータもあるけど、同じシューズで厚さだけ変えた場合は負荷率は変わらなかったりで研究間で不一致があるよ
- ソールが厚くなるほど不安定になるので回内して足への負担が増えたり、脳や神経が混乱して必要以上に強く蹴ってしまう可能性が指摘されているよ
- まだ研究例が少ない分野なので今後のさらなる進展が期待されるよ
コメント